クオリティスクールの新コンセプト[014]
クオリティスクールの新コンセプト[013] のつづき。
☆現時点で、神奈川エリアの共学私立中高一貫校で、トータルに生徒の応募者増加率が高いのは、山手学院である。
☆この私学の戦略はたいへんおもしろい。広報部隊の先生方と学内の先生方の役割が戦略的にロールプレイされているのである。
☆広報部隊が、受験市場よりのメッセージを明快に出すのに対し、学内の先生方は、生徒達にできうる範囲のクリエイティビティを開花させる環境を設定する。
☆神奈川の受験市場の寡占状態を形成してきた進学塾(もっとも講師陣はかなり教養があったのではないか)は、もしかしたらクリエイティブな話には乗ってこなかったのかもしれない。だから、そこ向けに戦略的なメッセージを送ってきたということかもしれない。
☆しかし、内部はクリエイティブで国際派。あれだけグローバルな環境だと、コミュニケーションの仕方がかなりコスモポリタニズムだろうなぁと予想してしまう。宮台真司さんとはやくからクロスオーバーな教育環境を作ってきた教師もいるぐらいだし。
☆学校によっては、広報部隊と学内教師が全く一致しているところもある。八雲学園のように、全員が広報担当である場合、全教師が受験市場と私学市場を使い分ける複眼思考をもっている。もちろん、麻布のように、全教師が私学市場のメッセージだけ送っているところもある。
☆ともあれ、山手学院は外と内のアウトプットが違っていた。今はどうかわからないが、ホームページを見る限り、やはり変わっていない。だから、そこの違いを見抜いているというか感じ取っている受験生や保護者が増えていることは私立中高一貫校全体にとってもよいことではないだろうか。
☆先日立命館アジア太平洋大学を訪問した時に、リベリア出身の学生、ウズベキスタン出身の学生、そして日本出身の学生とディスカッションしたが、世界に対する広く現実的な問題意識をもっているのに驚いたし、高感度なコミュニケーション能力に感動した。
☆学生たちは、それぞれ中高時代の自分の歴史を大事にしている。もちろん今の日本ではあり得ないような戦争体験や政治的な圧力を経験し、平和な世界のために国連で働きたいというきっかけになったという意味で大切にしているということもあり、居場所としての思いでとは違う。
☆しかし、いずれにしても中高時代のそれぞれ違う経験、つまり文化をもった学生たちがいっしょに(これはAPUの学生の共通キーワードだと感じた)議論できるオープンなコミュニケーションの雰囲気があった。この雰囲気には受験市場だけで学ぶことの多い日本の学生にはもしかしたら厳しいかもしれない。
☆ところが、そこに居合わした日本の学生は、実にフラットで良い感じでコミュニケーションしていた。論理的だし感性豊かだし、日本の将来も捨てたものではないと感じたが、あとで聞いたところ、中高時代は山手学院で過ごしていたようだ。自分の中高時代を誇りに思えることは、こんなにも大切なことだと思った。
☆卒業生が山手学院の教育の質を証明している。そう感じ入った。
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