クオリティスクールの新コンセプト[028]
☆聖学院グループの中で、今年は男子聖学院が健闘しているが、女子聖学院にしても聖学院大学にしても、生徒獲得戦略は成功するだろう。
☆質の高い教育への日々の努力と生徒獲得のための戦略を練ることにかけては、各学校に優れたアドミッション・オフィサーがいるからだ。
☆男子校、女子校、大学のアドミッション・オフィサーの特徴は、聖学院ビジョンをその戦略に巧みに織り込むことだ。
☆このビジョンはかなり高邁な精神が貫かれている。礼拝を中心として世界の痛みを払拭するために、奉仕する精神を教育実践していることを真摯にアピールしているのだ。
☆聖学院大学では、今や85%の大学が採用している大学入試センター試験を採用しない。そもそも私立大学がなぜ国家が管理する試験を活用するのかというクリティカルシンキングが働いている。
☆民主党ではないが、官主導の近代化路線の危うさに建学以来警鐘を鳴らし続けているのである。もちろん、戦後教育基本法を改正することを阻止しなかったり、憲法を改正しようという民主党に賛成しているわけでもない。
☆ともあれ、偏差値や大学進学実績に拘泥しない教育実践は聖学院の初等中等教育システムにも貫徹している。
☆それゆえ、この信念と良質の教育を理解する学校選択者は少ない。キャズムを乗り越えるための理論を展開しているジェフリー・ムーアによれば、このような聖学院の良質教育に積極的に共鳴するイノベーターは2.5%ぐらいしかいない。
☆このようなデータは、いろいろなマーケティング調査でも同じような結果がでる。そういえば、首都圏の私立中高一貫校に進学するのは、全国の6年生の3%であるから、私学の教育に積極的に共鳴するイノベーターのシェアに相当するのではないか。
☆その3%の中の2.5%だから、聖学院中学、女子聖学院の教育に共鳴する受験生は1,500人ぐらいということだろう。聖学院大学だと全国区に対する2.5%だから、15,000人ぐらいの若者に賛同を得られるのだろう。
☆大学進学実績がよければそれで安心だとか、大手企業の就職率や公務員・資格試験の合格率が高ければそれで安心という消費者は60%ぐらいだといわれているが、そこをターゲットにする必要はない。
☆デフレスパイラルがもっと深刻化すれば、その60%の中からイノベーターになろうとする人材が誕生するから、厳しい中で、聖学院グループはそれが逆にチャンスになる可能性がある。
☆経済状況がよいときは、聖学院グループの中で、男子聖学院が苦戦していたが、長引く不況時にあっては、男子聖学院が健闘しているということは、聖学院グループの中でも、イノベーション創造格差があるのだろうか。
☆いずれにしても21世紀のリスク世界は、成功が次の瞬間リスクになる。リスクと安全はコインの表と裏で別物ではない。実に不確実で不安定、不透明な世界。この世界の動向に高感度のアンテナをはりながらも普遍的精神を持続可能にするには「ド根性」が必要なのだが、聖学院グループのアドミッション・オフィサーの「ド根性」はかなりのものである。
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