クオリティスクールの新コンセプト[029]
☆先週土曜日(1月23日)、白梅学園清修は、4年生(高1)によるEU研修報告会があった。清修は新設から5年目にはいり、今春5期生を迎えるが、高校1年までにリベラルアーツ的なプログラムの大きな流れが実行できた。
☆高校2年からは、4年間蓄積してきた経験値をいよいよ大学進学などの進路実現のための教育活動にシフトしていく。
☆だから一期生である4年生は、次のステージへ大きくジャンプすることになる。
☆4年間の経験を通して、自分なりの潜在的な才能を見出してきただろうから、その才能を実現するために、自分の人生の道への思いをまずは形作る準備をしているということだ。それは各自が論文編集に取り組んでいると。
☆それによって、自分の問題意識や世界観が意識され、それを解決したり探究を広めていく内面からのモチベーションが生まれ続けるようになることを先生方は期待されているという。(だから白梅学園大学の学長汐見先生と思春期学のセミナーを開始したのかぁ。)
☆一方で、1期生のもう1つのミッションは、後輩とともに歴史をつくりあげていくことである。だから、各学年クラスを7チームが順番に回り、EU研修の報告をプロジェクターで映し出しながらプレゼンしたのであろう。
☆特にEU研修は、2つの大きな目的があったそうだ。国連とEU議会と強制収容所、シェーンブルーン宮殿とベルサイユ宮殿、リンデンバウム美術館とルーブル美術館、ウィーンとストラスブールとパリなど政治経済、文化、芸術、環境と都市、戦争と平和など、世界の問題と自分の問題意識を結び付けながらテーマを発見することが1つ。
☆もう1つは、白梅学園清修の教育理念や建学の精神のルーツの確認。教育理念は、私立学校を選択する際の指標の一つである。思春期の中で、どのような行動基準とビジョンを思い描いて育っていくのか、つまり自分のアイデンティティと共鳴できる大きな(世界に通じる)理念とは何かはやはり重要である。
☆同校の場合、創設者小松謙介の思想に影響を与えた人物は、吉野作造、新渡戸稲造、与謝野晶子、小泉信三らがいた。直接には官学の優勝劣敗思想に反骨の精神で臨んだ、民法学者(特に家族法)の穂積重遠、語学の神様と呼ばれ、自由法学主義者の牧野英一がいた。
☆彼らはいずれも日本の近代国家の形成史で大活躍した人物であるが、近代化路線の正しい道を踏み誤らないように警鐘を鳴らし続けた先達者たちでもある。
☆そして、彼らが学んだルーツこそ、EUの思想と共通する啓蒙思想や疾風怒涛の時代の精神なのである。そしてこれはまた≪私学の系譜≫のルーツでもある。EU議会のあるストラスブールを中心にEU研修のプログラムが作られたのはそこにつながるということである。
☆結局は社会と個人のジレンマをどう解くのかという、近代誕生以来その解決に向けて、壮大な光と闇の歴史が今も続いている。戦争の問題は、その極端な最悪な事態なのであるが、国連の平和解決のモデルをつくっているヨハン・ガルトゥングが言うように、このジレンマは友情→家族→学校→社会→世界を貫く解き難いそしてこのそれぞれのステージと複雑にからんでいる課題なのである。
☆歴史学者加藤陽子(東大教授)さんが、特殊の中に普遍が存在することを発見することが科学なのだと語るように、白梅学園清修の1期生は、自分の問題の中にある普遍的な問題に気づき、それに挑戦する=サバイブする準備をすることが、清修の理念であることを後輩に伝えるチャンスをつくったに違いない。
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