受験市場から教育多層市場へ [07]
受験市場から教育多層市場へ [06]のつづき。
☆前回、大学入試問題を突破するのに、CCP(クリエイティブ・コミュニケーション・プロジェクト)のプログラムが役に立つという話を紹介したが、メールのやり取りである私立中高一貫校いくつかが、3月ぐらいまでにコンパクトにまとめようという話になった。その打ち合わせにひょうこり参加してもよいという話にまでなり、新年早々ワクワクしている。
☆中学入試問題も実はそういう面白さ満載なのだが、雑誌や新聞のメディアの方々と話しても、全く視点が受験市場的で、目の前の販売部数のほうが気になって、興味を持ってもらえなかった。なにせ中学受験問題といえば、テレビでやっている知識問題だと思っているのだ。番組的にはわかりやすいし、視聴率もあがるかもしれないが、本質的では残念ながらない。
☆しかし、大学入試問題と中学入試問題が直結しているのだという話に広がる今回の話は少しは興味を持ってもらえるかもしれない。受験市場ではなく、あくまで私学市場の視点で、見えるとどうなるか?という視座はなかなか興味深いとは思うが。
☆そんな話を年末からし始めていたという話をしているのだが、そんなときある盟友が慶應大学総合政策学部の2009年の小論文の問題を提供してくれた。なんと民主党と自民党のマニュフェスト全部が資料になっていて、その資料を比較分析して自分なりの政治政策を論じる問題だった。おもしろいのは四座標軸でもそれを表現しなければならない。
☆受験市場的には、文章の要約力とコンパラティブ・スタディの視点で整理すればよいわけである。しかし、私学市場的にはどうなるか。それをコンパクトにまとめるならば、宮台真司氏と福山哲郎議員の対談集「民主主義が一度もなかった国・日本」 (幻冬舎新書)になる。宮台氏の四座標の表現も解答の1つだ。
☆だから、この慶應の問題を受験勉強するときに、解答そのものはクリエイティブな発想を抑制しながら解けばよいが、そこで終わりではなく、上記の本を読み、自分なりにこの新書分の膨大な文脈を批判的に検討し、論文を書いてもおもしろい。
☆もちろん、受験勉強を高校2年からやったのでは、遅すぎる。中学からこういう学びの習慣をつけておく必要がある。だからCCPなのだ。これは先取りではない、むしろ拡充学習だ。
☆先取りは拡充の学習の密度が濃くなるにつれ、結果的に加速する。単純に時間を速めているのではないのだ。この速度感こそ生徒の知の飛躍の瞬間でもある。その瞬間を見のがさない教師が進路指導の達人なわけである。そしてその見逃さないというコミュニケーションこそ、クリエイティブ・コミュニケーションなのだ。
☆この達人、開成や麻布、駒場東邦にたしかにたくさんいるのだ。CCPと言っても、すでに高度に暗黙知化されているから、老舗のうなぎ屋のたれの作り方を聞いているような感じになるのだが、おもしろい。
☆しかし、もっとおもしろいのは、この高度な暗黙知をプログラムとして実施しようという私立中高一貫校がたくさん誕生していることだ。高度な暗黙知を有した教師は、まだまだ若いためにたくさんは存在していなくても、学校全体として組織的に取り組めばよいわけである。ただし、それができるのはヨーロッパ型の学校の場合は弁証法的発達段階を深く理解しているリーダーが、アメリカ型の学校は、プラグマティックなヘーゲリアンウェイを深く理解しているリーダがいる場合であるが、実際に着々と歩を進めている学校には、そのどちらかが必ずいるのである。生徒募集という受験市場では登場することはないので、なかなか受験生の保護者には伝わりにくいかもしれないが・・・。
☆しかし、私学市場としては、彼らリーダーのマネジメント能力の質の差がポイントになってくるはずである。
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