センター試験国語の解・怪・快・・・
☆今年の大学入試センター試験は概ね問題なく終わったようだ。どんな問題が出ているのかと現代文を見ると、岩井克人さんの文章が出題されていた。
☆で、斜め読みしたら、いくつかキーワードが入ってきたので、商業資本主義と産業資本主義、金融資本主義という表層的歴史の違いの外皮を暴くと、資本主義ってえのは、結局差異を創り出す資本家の思うつぼなんだよという岩井さんの発想が書かれているだろうと思い、そのまましっかり読まずに問いを解いてみた。
☆そして、えっなんて素直な問いのデザインなのだろうと思わず感心した。直接的な選抜試験の性格を持っているわけでではないから、どこまで解けるかが重要で、結果は各大学が参考にするのだから、これでよいのかもしれない。
☆それにしても、選択式問題で終わらせるのはもったいない文章だ。リーマンショック以来のデフレスパイラルがなぜ起こったのか、これを解決するにはパラダイムを変えなければ、資本主義的対症療法サイクルを持続可能にするだけなんではというようなことを考えるショートエッセイ型の問題にした方がおもしろいのに・・・。
☆しかし、世界史や日本史で、岩井さんのような視角で歴史を見通す力を養っているだろうか。もしかして表層的歴史的事実の比較で終わっていないだろうか。
☆岩井さんに言わせれば、事実そのものを選択して配列している歴史そのものが、すでに商品として差異化されたものに過ぎないのだが、だとすればそこに気づく視角をどこで学ぶのだろうか。
☆本来歴史という教科で学ぶことは、そういう歴史科学的な発想なのかもしれないが、どうも実際は違うような気がする。というのも1つの視角だけを学ぶわけにもいかないだろうから。
☆結局、現代国語で学ぶ環境を作るしかない。現代国語なら、同じテーマで視点の違う作者の文章を比較分析できるからだ。どの発想を自らのものにするか、あるいは新たな発想を自ら作り出すかは、自由である。
☆それにしても、岩井さんの発想は実に興味深い。作られたもの(農耕なのか狩猟なのか牧畜なのか工場生産なのか問わない)とそれを商品として差異化することを分断し、それぞれをさらに組織化する。そうすることで人間は排除されるというのだから。
☆ビルゲイツの語るクリエイティブ資本主義とは、できる限りこの分断を横断化しようということだろう。ものを作る人、それを商品化する差異を企画する人、営業する人、財務管理する人がIT機材とインターネットによって、限りなく同一人物、つまりクリエイティブクラスによってマネジメントされるようになる世界。
☆この時期にこのような文章が出題されれば、受験生にとっては、問題を解くことより、思考が転回しはじめるではないか。しかし、それでは入試にならない。やはり入試というのは思考停止を生みだすシステムなのだろうか・・・。
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