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クオリティスクールの新コンセプト[059] 聖園女学院に期待

クオリティスクールの新コンセプト[058] 三輪田に期待できるコトのつづき。

☆聖園女学院の新中1を迎えるオリエンテーションも無事終了し、募集定員を充足する入学者の数が決まった。

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☆厳しい中学入試の状況下で、生徒獲得戦略は見事に成功した。しかし、総応募者数は、ここ3年間がんばってきた以前の数に戻ってしまった。

☆もちろん、もともと小規模サイズの定員で、3回入試を実施しているのだから、550人前後の総応募者数があれば、入学者は定員を安定的に充足できるから、3年間がんばってきて、リーズナブルな募集が確立したという見方も可能だ。

☆それに出願の出だしは良かったわけだから、伸び率がおもわしくなかったとしても、ファン層の形成が確立できたからよいのだとも言える。

☆しかし、飛躍する学校・持続可能性の高い学校というのは、常にこれでよいのだと思うことはない。まだ工夫すべき点・改善すべき点があるはずだと、毎年言っているものである。

☆おそらく聖園学園もその例外ではない。すでに学内では、来春に向けて議論が活発に行われているだろう。

☆生徒獲得戦略の技術的な側面から言えば、たしかにある程度、減少の説明はつく。

①聖園女学院は午後入試を実施していない。

②帰国生募集を戦略的に仕掛けていない。

③学校説明会の回数が少ない。

④中央大学山手女子や青山学院大学の連携校の進撃に対抗する手段を講じていない。

⑤説明会で配布される資料のイノベーションがおちついた。

☆それから、世界同時不況の影響に対応する特待制度や奨学金制度(入試前段階の制度)を本格的に制度化していない。

☆受験市場に対するマネジメント戦略が構築されていない可能性がある。日能研からの合格者は65人いるのに、SAPIXからは3人である。横浜女学院のSAPIXからの合格者は59人、捜真は14人であるから、バランス的に聖園女学院にももっとSAPIXからの合格者が出てもよいはず。

☆しかし、以上の技術的なことや受験市場に対する目配り・気配りは、本当のところはねのけてしまってよいのだ。特に特待制度などは、カトリック校としてやるべきではないだろう。なぜなら、聖園女学院は、聖園子どもの家をサポートしている。すでに特待以上のサポート活動をしている。ただ、それをPRすることはまずない。だから、そこを理解しているファン層を形成することがこれからも最優先のはずである。

☆ひたすら誠の道を歩めばよいのだ。それには、説明会で配布されている「各教科の入試問題に関する資料」と「聖園女学院の進路指導」の冊子の中味の進化に期待したい。

☆「各教科の入試問題の資料」は、ただたんに出題傾向が掲載されているわけではなく、学びの視点、思考の視点、論述の視点も加わっている。しかし、その視点の構造が前面に出ているわけではない。ここがきちんと表現されれば、入試の段階で、思考錯誤して豊かな視点を開発してくる受験生が増えるだろう。

☆「聖園女学院の進路指導」の冊子では、「進路」と「学び」と「ミッション」の3本柱が具体的に展開し、そのプロセスの結果が合格実績として結実していることがわかるように表現されているが、その3本柱を有機的に結び付けている仕掛けが明確ではない。

☆仕掛けはあるのだが、見える化されていないだけであるが、そのヒントは在校生の感想文に見え隠れしている。それから、中1生は、一年間「宗教」を学んで、自分がどう変わったかという感想文を書いている。その抜粋が説明会で配布されているが、ここには、すでにJ.S.ミルやJ.J.ルソーの思想のベースであるゴールデンルールの視点に気づいていることが表れている。この視点はニューヨークの国連にも明示されている発想である。

☆大学入試の国語や社会の素材で出題されるハンナ・アレントの戦争と革命のジレンマを解く視点でもある。あるいはノルウェーの初女性首相であるグロ・ブルントランドの目線とも重なる。

☆ともあれ、この仕掛けこそ学びの視点・思考の視点・論述の視点であるはず。「入試→進路指導→大学合格実績」を貫き通す聖園女学院の知の構造デザインが表現される進化を期待したい。

☆すると自ずとファン層は安定するし、その口コミで総応募者数は増えるし、受験市場側から教えを請いに来るだろう。そして当然、結果的に大学合格実績も出るはずである。すると、あとは良き循環が生まれる。激動する社会だからこそこのサイクルを早急に構築しなければならないという事情もあるからなおさらである。

☆そしてファン層が集まっている今のタイミングだからこそ、本物志向の教育表現ができる。このファン層は私学市場にしっかり足をつけているから、難しいことはわからん(こういうことを平気で言う人は、真理なんかどうでもよいという価値観を持っている可能性がある)というポピュリズム的側面を否定できない受験市場の囁きに耳を貸すことはないはずだからだ。(もちろん、ファン層も受験勉強するときは、受験市場に腰を据えるわけだが・・・。)

☆ところで、この知の構造デザインは、いかにして可能か?聖園女学院の場合はボランティアというモチベーションを上げる文化がもともとしっかりある。また美術のシラバスの基本がバウハウス的である。

☆この両者は、各教科の知的システムの基礎である。認知科学的に、それを共通構造として見える化できるアドバンテージが高い。

☆すでに「各教科の入試問題に関する資料」を見ると、社会科はそのレベルに達している。このまま6年間社会科を勉強していくと、慶應大学の環境情報・総合政策や東大の問題に対応できる力がつくと予感させるものがある。この両大学の入試問題は、入試問題の領域を超える思考問題が出題されるので、大学受験勉強以上の力がついているかどうかを試す時に有用である。

☆聖園女学院の進化に大いに期待したい。

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