2010中学受験市場[09] 日能研 vs SAPIX ⑦
2010中学受験市場[08] 日能研 vs SAPIX ⑥のつづき。
☆昨日11日、開成、麻布、慶應普通部、駒場東邦、筑駒、栄光がいっせいに合格者を招集した。これによって、併願によって複数合格していた受験生が、これらの学校のうちどこに進むのかがはっきりしたわけだ。当事者である子どもたちにとっては、合格者から入学者に切り替わった瞬間だろう。
☆これによって、日能研とSAPIXの合格実績も塗り替わる。昨夜23時の段階で両塾サイトが公表していた数字で、いつもの一覧表を更新しておいた。
☆クリエイティブクラス日能研とファーストクラスSAPIXのコントラストが明白になってきたのであるが、このクリエイティブクラスというのは、歴史的文化的な制約にかかわりなく本物志向の創造性を大切にする学校という意味で、クリエイティブなのか、ビル・ゲイツが語るクリエイティブ資本主義を牽引する新しい人材を育成する学校という意味で、クリエイティブなのかは、実際には未分化状態である。
☆大勢は、私学市場としては前者で、受験市場としては後者かもしれない。しかし、私学市場の中にも、後者の立場に立つ学校もある。それは経営陣が企業人出身の場合である。
☆渋沢栄一のような企業家ではなく、2000年前後以降私学経営に乗り出してきた企業家の中には、クリエイティブ資本主義的発想をしているひとが多いだろう。
☆さて受験市場はといえば、クリエイティブに関しては、広義の意味でとらえ、本質的であれ資本主義的であれ区別はしないだろう。
☆だから、最終的に本質的クリエイティブクラスを選ぶか資本主義的クリエイティブクラスを選ぶかは、受験生と保護者である。しかし、受験生・保護者がこのような分類をして選ぶとは考えにくい。
☆いずれにしても、この一覧をずっと時系列でおってきて感じるのは、ファーストクラスの学校群は、その中だけで動いているということである。昨日の招集日の結果、繰り上がり合格が動くのはそのクラス内においてである。女子の場合も、御三家、フェリス、慶應グループ内で動くのである。
☆ということは、SAPIXにもクリエイティブクラスを志望する受験生・保護者もいることになる。これは当然のことなのだが、問題はその家庭の価値観である。ファーストクラスは選択しないが、それに通じるクリエイティブクラスということになれば、雰囲気としては資本主義的クリエイティブクラス(市場原理主義的発想のクラス)を肯定する価値意識をもっている家庭層が多くなるだろう。
☆たとえば、広尾学園は、日能研の合格者は101人だが、SAPIXの合格者は224人である。市川は、日能研は322人で、SAPIXは350人。もはやレイトマジョリティ的な意識が反映しているから、市川の場合は、選択者側の意識の差が見えない。
☆しかし、広尾学園は生まれ変わってから新しい。その教育イノベーションを選ぶかどうかは、アーリーアダプター的な意識の差がはっきり表れるのではないだろうか。
☆もちろん、バランス意識を大切にする層はどちらにもいるだろう。本質的であり資本主義的でもあるクリエイティブクラス。
☆たとえば、恵泉は本質的クリエイティブクラスの学校だが、大学進学実績も出ているし、OGによるキャリアデザイン教育などはやくから実施していて、資本主義的な要素もあるように映る。選択者側はバランスがよい雰囲気を感じるのだろう。SAPIXの合格者が15人(2008)→24人(2009)→37人(2010年)と増えているのはバランス感覚的なクリエイティブクラスを望む価値意識をもっている家庭層も着実に増えているということだろう。
☆今後SAPIXはこの層にどのように働きかけるのだろうか。このバランス感覚層は、はじめからファーストクラスを志向しない可能性が高い。資本主義的クリエイティブクラスは、新しい学校にファーストクラスに近くなる期待もどこかで感じているはずだから、SAPIXとしては結果的にファーストクラスビジョンで進めるはずなのだ。
☆ところが、その志向性のないバランス感覚層は、SAPIXを特に選ぶ必要はない。もしあるとするならば、スマートな感覚がどちらかということか。日能研の場合は、教室責任者によって、スマートなのか情熱的なのかは違う。システムとしてスマートではある。
☆いずれにしても、本質的クリエイティブクラスが≪私学の系譜≫であり、私学市場としては受験市場に対してどのようなリスクマネジメントしていくかは、重要な時代がやってきた。
| 固定リンク
「受験市場」カテゴリの記事
- 【お知らせ】6月10日(日)、今年も沼津で「学校を知ろう」進学相談会が開催される。(2018.06.01)
- 伸びる学校組織と市場の関係(2017.11.11)
- 塾歴社会の行方【04】私学の力は教育の自由・経営の自由!(2017.02.06)
- 塾歴社会の行方【03】中学受験から中学入試へ(2017.02.04)
- 塾歴社会の行方【02】中学入試か中学受験か(2017.02.04)
最近のコメント