クオリティスクールの新コンセプト[081] 湘南白百合の意義
クオリティスクールの新コンセプト[080] 東京女学館と日本女子大附属のつづき。
☆湘南白百合の中学入試における応募者推移は次の通り。定員60人であるから応募者は180人集まれば、質量的にみても生徒獲得戦略としては問題がない。2000年以降、湘南白百合の教育に大きな変化は基本的にはないはずだ。にもかかわらず、生徒募集の推移グラフは、大きな波のような軌跡を描いているのはなぜだろう。
☆東大合格実績の数に影響されているのだろうか?たしかに1999年、2000年は、東大合格者の数は2名、6名と続いている。しかし、東大合格者の発表は、中学入試が終わってからだから、影響は次の年に出るはず。
☆2000年の6名は、たしかに業界に激震が走っていたが、だからといって、2001年の応募者が2000年を上回ったかというとそうではない。
☆2003年は東大合格者はいなかったから、2004年生徒募集が減ったかのような因果関係を持ち出したくなるが、むしろその年はサンデーショックだったし、日本女子や東洋英和が2回入試を設定した年であり、外部要因の方が影響力があったのはないか。
☆2005年は東大合格者は5名。2006年の生徒募集は激増した。やはり東大の合格者数は関係ないとは言えないが、昨年の春の東大合格者は3名。その前の年はいなかったから、今年の生徒募集は飛躍したかというとそうはいかなかった。
☆東大合格者の数はまったく関係ないことはないだろうが、湘南白百合の生徒募集に関しては、外部要因のほうが大きいだろう。そんな中で、受験業界の言説に左右されずに、湘南白百合の教育にほれ込んでいるファン層が180人は、毎年いると考えたほうがよいだろう。
☆教師と生徒の関係は、ほんとうに自然だし、探究活動が旺盛な学びの環境がベースになっている。自然と精神と社会への痛みを感じるこころが一体になっている教育が染み渡っている。そこに気づくかどうかは、繊細で鋭敏な言語感覚が必要である。
☆湘南白百合の校訓としての教育理念は、
従順-真理の声に従うよろこび
勤勉-能力を磨き役立てるよろこび
愛徳-互いに大切にし合うよろこび
☆であるが、校訓を表している3つのキーワードは、いずれも日常的な使い方とは意味もイメージも微妙に違う。この微妙な差を感じ取ることができる受験生やその家族が選ぶ学校なのではないだろうか。
☆「従順」「勤勉」「愛徳」というと、近代日本社会ではどちらかというと資本主義を支える精神として理解されてきたと思う。しかし、とくに資本主義の延長上にあるポストモダニズムは、真理なんて相対的だとみなしてきたし、能力もあくまでも企業や官僚などの組織が資格として 認めている能力を意味してきた。外部が認める能力は、今はやりのキャラの一種だ。愛徳も利害関係のある絆であった。
☆しかし、それが今行き詰っているのは火を見るより明らかだろう。だからこそ湘南白百合の教育は重要なのだが、学校当局が大PRをして応募者が殺到するのは、これまた困ったことになる。
☆自らその価値に気づいた受験生にチャレンジしてもらえればよいのである。それでも180人受験すれば、全員が入ることはかなわない。生徒募集推移の波の軌跡は、湘南白百合のジレンマの痛みを反映しているのかもしれない・・・。
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