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これからの学校は世界標準の授業ができるかどうかがカギ

☆昨日23日、後期試験の合格発表があり、そろそろ東大合格者発表の季節も終わりに近づいた。学校別の東大合格者の数を見るにつけ思うことは、このままでは日本の学校の授業は基本的には変わらないということである。

☆つまり、東大に合格するための勉強が行われる授業は、指導案に基づいた、あるいはせいぜいシラバスに基づいた授業以上でも以下でもないからだ。

☆この授業を別の言葉で置き換えれば「プログラム」である。指導案やシラバスに基づいたプログラムなのである。

☆ところが、この授業プログラムは、東大を頂点とする大学ピラミッドの入学のためのプログラムとしては十分であるが、プログラムの仕掛けとしては世界標準ではない。

☆もちろん、「誰にっとっての」プログラムなのかという観点で授業は作られているから、東大ピラミッド体制の中に入学する生徒にとってのプログラムとしてはこれでよいのかもしれない。

☆しかし、生涯学習や企業研修などのプログラムは、ものすごい進化を遂げている。それはそうしなければ、グローバルな世界でサバイバルしたりビジネスを展開したりしていくのに役に立たないからだ。

☆かつては企業の研修も、学校の授業空間の延長だったが、今ではいわゆるプロジェクト・ベース学習のプログラムのデザイン方法と同化している。

☆企業でやっていることなんか学校では関係ないといわれるかもしれないが、企業が開発したのではない。

☆もともと欧米では、特に米国だろうが、プログラムを組む時に、教える内容と教える方法とをきちんと分けてデザインする方法論が学問としてある。

☆特に90年代以降のIT革命がもたらしたメディアの飛躍的発展と浸透によって、メディアをプログラムの中でどのように活用するか重要になってから、方法論の注目度は高い。

☆ITのプログラムと授業方略のプログラムという表現は混乱するので、おそらく授業や研修、イベントなどのプログラム設計の事を、「インストラクショナルデザイン」と言っているのだろう。

☆この学びや教授の方略・戦略をデザインする一般理論としての学問があって、それを企業研修やイベント、学校の授業に応用していくというのが欧米の流れである。

☆これは89年のベルリンの壁が崩壊して、グローバリゼーションが加速度的進展にシンクロするかのように発展した。

☆島国日本には直接インパクトはなかったかもしれないが、欧米では移民を典型とする異国の民の大量移動があったわけで、文化や言語が異なる人間同士の知の共有方法をどうするかは切迫した課題だったに違いない。

☆知の内容はそれほど違わないが、それを共有する方法論は何か、しかもそこにITメディアが新しく加わるという経済の流れもぶつかっていた。

☆もちろんグローバリゼーションとはひと・もの・かね・情報という経済だけではなく、冷戦終焉後の軍事体制の見直しという日本の国民にとってはあまり関係がないと思われている領域が重要でもあった。当然軍人の養成のためのプログラムの方法論が盛んに研究開発されたに違いない。それはITと同様の流れがあったに違いない。

☆良し悪しは別にして、「インストラクショナルデザイン」もそのような必要性があったのだろう。

☆事情や情況はなかなか難しいものを孕んでいるが、大事なことは、そのプログラムデザインの一般化なのである。この一般化されたデザイン方法論こそ、日本の学校もそろそろ体得しなければ、ガラパゴス日本でしか生きていけない人間を育成してしまうことになる。

☆このプログラムのデザイン方法論(「戦略デザイン」と呼ぼう)は、認知科学や心理学に基づく学習理論、チームワークやリーダーシップのマネジメント論、感情と論理を使い分けられるコミュニケーション学、パラグラフライティングのような簡潔・簡明・感銘なライティング方法、数学・読解・科学・地理学的リテラシー、ITやWebの活用技術などが、学びの目的に応じて最適化できるようになっている。

☆そしておもしろいことに、この戦略デザインが開発されるに伴って、知の内容にも変化が起きているのである。それがEQだとかMIとか言われているものだ。ブルームのタクソノミーも研究者たちによって進化させられている。

☆さて、このように戦略デザインあるいはインストラクショナルデザインという授業やイベントのプログラム方法論という切り口で学校の授業を見ると、学校の質の見方がガラリと変わる。つまり世界標準であるか国内標準であるかという違いがわかる。

☆残念ながら公立学校は、国の教育政策がまだまだ国内標準であるがゆえに、戦略デザインが行き届いていない。米国などでは、公立学校においてもこの学問が適用されているのに・・・。

☆今のところ初等中等教育の授業やイベントの教育活動で、このような戦略デザインの方法論を導入しているのは私立学校である。

☆そして導入しているという点では、ほとんどの私立学校が行っている。しかし、まだまだ外注のパッケージものを導入していて、学内の教師自らが作り上げているところは少ない。もちろん、教師だけで作ろうとするのは、そもそも戦略デザインの方法論からすれば論外で、方法論の専門家とチームをつくって協働していくことが肝心なのである。

☆この戦略デザインは、外部との協働によって世界標準が保障されるのである。このリスクマネジメントがポイント。自前主義でもパッケージ主義でも良質の教育は形成できない。

☆この戦略デザインをサポートできる教育関連市場は、日本ではまだ未成熟である。受験市場でも学習指導要領をベースにしている教育市場にもまだない。たしかに、1つの方法論を信奉している塾はある。しかし、それは戦略デザインの方法論からすればズレている。多様な方法を研究し、学びのメンバーの情況や目的に応じて最適な戦略を考案することができなければ意味がない。1つの方法論を押し付けることは、どんなに優れた方法論であろうと、学習者にとって有益ではない。その塾にとって利益があるというだけなのだ。

☆それはともあれ、あるとすれば、ワークショップ型のプログラムやコーチング、ファシリテーションなどのプログラムを作っている学びの市場だろう。しかし、まだまだ広がりはない。スポーツ市場では、このようなプログラムの戦略デザインは当たり前であるが、それはまだまだアスリート専用で、一般化していない。(そういえば、優れたアスリートを育てた体育教師が中心となって盛り上げている私立学校は勢いがよい。)

☆現状では私学市場が他の市場とカップリングを進めながら体得していくしかないのだが、すでにその動きをしている学校がある。このように戦略デザインを教育活動に応用している学校を≪未来を創る学校≫と呼ぼう。

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