白梅学園清修の理念の現代化
☆白梅学園清修の副校長柴田先生にお会いした。今年清修は5期生を迎え入れた。柴田先生によると、新入生のオリエンテーション最後の日、このようなことを新中1に語ったそうである。
今の社会は、実は不平等。その現実を無視してはいけない。だから平等な社会を作りたいわけだけれど、今すぐになるわけではない。平等な関係を大切にすることはとても大切。しかし、不平等な現実の中で、生き抜く力を身につけなくてならない。そんな社会に負けてはいけない。みんなが負けないで生きていくことが、平等な社会になるための大きな一歩なのだ。負けないようなものの見方や考え方、心と身体をつくっていくサポートを大いにするからね。
☆柴田先生独特の語りであるが、これは私立学校の理念の大枠でもある。生徒は生まれる時代を選べない、しかし時代を変えることはできるという強烈な信念を形にしようというのが私立学校の気構えである。
☆しかし、その方法論や考え方は私立学校の理念によって違う。清修の場合は、ヒューマニズムに根っこがあるから、どうしてもJ.J.ルソーに立ち返るのであろう。
☆ルソーの「人間不平等起源論」も「社会契約論」に並ぶインパクトのある本である。簡単に言えば、柴田先生の語りに要約されるのだ。
☆市民社会への転換のときも、世界共和国への転換のときにも、常にルソーとその弟子たちカントやヘーゲルの思想が背景にあるが、国家から世界市民へと時代がシフトしている今もまた、ルソーは脈々と生きている。
☆ルソーへの回帰こそ、徳なき名誉と智慧なき理性によって作られた不平等な社会を生き抜き改善することなのであると柴田副校長は語る。
☆大きな物語や理念を失った社会がポストモダンな社会と言われて久しいし、大学入試の現代文でもよく出題される命題であるが、ルソーに言わせると、自然状態から生まれ出た社会そのものはすでに、徳なき名誉と智慧なき理性におおわれた社会。
☆日本のポストモダンを語る現代思想家は、結局ルソーの発想から抜け切れていないといういことか。それはともかく、ルソー的背景のある理念を現代化している清修は、大変興味深いし、若い先生方のやわらかい言葉に、ときどき情熱とセンスの良さを感じるのも、そういうことだったのかと合点がいった。
☆核安全保障サミットなど世界平和への基本的な思想も、ルソー―カント路線だろう。清修の教育も先見性があるということではないだろうか。
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