明大明治の教師の高次連携知
☆再び、明大明治の松田先生と江竜先生とお会いした。今回はお2人の授業も少し拝見。そしてわずかな時間であるが、お話を伺った。
☆そして大いに感動もしたが大いに打ちひしがれもした。
☆お2人の授業は、2008年に調布に移転して以来、多くの先生方とコラボしながら、非常に特徴的なそして世界標準の知性をつくってきたということがわかった。
☆しかし、それを表現するメディアを私も持ち得ていないが、世の中の既存のメディアでも表現しきれないと思い知ったからだ。
☆松田先生の授業は、体験(テキストを読むという意味なのだが)→マインド・マップ(様々なシートが創意工夫されている)→自己参照→議論→プレゼン→他者参照・・・という流れになっている。
☆そして、この1つひとつの過程に、司書教諭としての情報を整理・解釈・批判するスキルが挿入される。
☆思考とは、常に世界をイメージするあるいは呼び起こす流れであり、その流れを分断すると思考も止まる。だから、流れを生かすためには、それぞれのポイントで、メンテしていかなばならない。従来は、そこは根性でがんばれと言われてきたところだ。実は根性というより、流れに乗った一部の生徒が成績をあげてきただけなのである。
☆ところが松田先生と江竜先生の連携により、この流れを多くの生徒が泳ぎきることができるのだ。学びの流れという環境設計図とそれを実現するスキルが結び付いている。
☆しかし、その高次連携知をどのように表現すればよいのだろうか。というのも、テキストを読むというスキルを開いて見せない限り、ただ読んでいる姿が映し出されるだけだなのだ。しかも、このテキストは、読書体験もふくめた体験すべてを言うのだから、これについて理解をしようと思うと、それだけで広く深い議論が繰り広げられる・・・。
☆マインド・マップを活用するスキルを開かなければ、ただ書き込んでいる姿が映し出されるだけなのだ。
☆自己参照もそのスキルを開かなければ、ただ振り返っている姿や感想を映し出すだけなのだ。この自己参照だけでも、やはり膨大な思考が必要とされているものであるし・・・。
☆つまり、自己参照をするには、自分なりのものさしがなければならないが、それははじめから出来上がっていたのならば、誰も苦労はしないし、人生悩むこともないのだ。正解のある問題をやっているうちは、自己参照は作動しない。解答集と自分の解答を照らし合わせれば良いのだから。
☆しかし、その解答集自身を、自らが作れるようにならないと自己参照はできない。だから、常に参照するものさしは揺らぐし、変容する。その過程こそが、自己の参照基準を確固たるものにしていくのだろうが、では、正解のない問題で、自分の足場をつくっていくスキルはどうしたらよいのか。そこで登場するのが司書教諭としての江竜先生の知のスキルである。
☆こんなふうに、学びの流れの環境のあらゆるところで、知のスキルが結び付いているのが、明大明治の教師の高次連携知だ。
☆自己参照問題と理念問題と世界の問題。生活―ものさし―世界標準という知のシステムが、授業というワンシーンの中に、すべて収納されているのだ。
☆この高密度の高次連携知をどのように表現したらよいのだろうか。
☆世界の問題が生徒1人ひとりの成長にかかわるように授業を設定している明大明治の授業。この状況と同様の私立学校もたくさんあるだろう。
☆私立中高一貫校の本源的授業知を表現する見識を持っているメディアはあるのだろうか。ファリード・ザカリアの「アメリカ後の世界」の知性は、すでにこのような授業の中では当然のように流れている。しかし、受験産業ベースのメディアは、このレベルにすらない。宇野重規さんの「<私>時代のデモモクラシー」の知性すら超えてしまっているのが高次連携知である。しかし、受験産業ベースのメディアは、このレベルには及ばない。
☆このような高次連携知など了解不能なのが、既存の教育関連メディアである。NHKの「テストの花道」というわかりやすい学びの知を開く表現ですら、松田先生と江竜先生の授業の一瞬間をズームアップして終わっている。だいいち、理念問題も世界問題もない。
☆もちろん、大学受験勉強という条件設定があるからだが、現実にはそれが授業そのものなのだ。むしろ、今までにない授業だという設定にすりかわっているから、大学受験勉強という条件は、実際にははずれている。
☆本源的授業知。世界内存在という鉄鎖をぶち破る知性を養う明大明治の授業を表現するメディア(私自身も含め)がない・・・。人間にとってもっとも必要な泉を汲み取る道具=メディア=ツールがない・・・。
☆ロールモデルとして松田先生と江竜先生に会う以外にほかに方法はあるまい・・・。生き様以外に、了解可能性は拓かれていないのである。
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