全国学力テスト 私立学校の参加減少の意味
☆20日、小学6年と中学3年対象の文部科学省の全国学力テストが一斉に行われたが、今回は、全国の対象生徒全員方式ではなく、3割抽出方式。しかし、自主参加する学校を合わせると、参加率は73.5%となったという。
☆そんな中で私立は昨年の約50%から24%に半減した。いったいこれは何を意味するのか。
☆自主参加の場合、一部経費を負担しなければならないから減ったのだろうか。それもあるかもしれない。有効なツールでないものには、お金をかけないのが私立学校である。
☆しかし、それはそれだけのことであるから、やはり全国学力テストのツールとしての有効性がはっきり問われたということだろう。私立学校の判断は、公立学校と違い、政策判断ではなく市場の原理による選択判断であるからだ。
☆全国学力テストの役割は、全員参加方式であったからこそ、その内容がどうあれ、ある一定の役割を果たせたが、抽出方式になったことにより、その役割は果たせなくなった。
☆まずはこれまで果たせたはずの役割であるが、
①生徒全員のある一定の学力を直接向上させるチャンス。
②生徒1人ひとりの学習戦略を自ら立てる信頼性・正当性・妥当性を得られる。
③OECD/PISA型の学びの理論を教育現場の授業に浸透させるきっかけ。
④学習指導要領の改善の役割。
⑤授業―テスト―評価のシステムの見える化・測る化が定着することによる学びの自立促進
☆抽出方式に変わることによって、このうち、④の学習指導要領の改善の役割に特化したことになる。
☆しかし、もしそうだうだとしたら、3割抽出ではなく、2割か1割抽出で十分だったはずである。結果的に70%参加。しかし、採点や許容は、おそらく現場でまちまちになるだろうから、でてきた結果データの信頼性・妥当性はかなり疑わしい。
☆だから、そのようなデータに従って、①・②・③・⑤の役割を果たすことは、ただ一定の学力のための競争ストレスを高めるだけの結果に終わる。
☆①の一定の学力を直接向上させるチャンスというのは、でてきた結果を現場で直接、同じように全国の学校が取りあつかえるわけであるから、ある程度競争原理によって、全体の学力が向上することは間違いない。
☆そしてそこに政策的な枠組み・制約はあるが、競争原理によって、テストの内容や評価の仕方の信頼性・妥当性が向上するから、日本の教育において学力とは何か国民も学校も考える大きなチャンスだったのである。テストと評価の公開は、教育現場の教育の質の情報公開にもつながった。その点においては、①の役割を果たさなくなっただけではなく、再び教育現場の学びの質の隠ぺいにベクトルは向かう事になる。
☆生徒1人ひとりが、自ら学習のプランをデザインするときに、全国標準のものさしで、デザインすることができる。これによって学力や意欲の地域格差を是正することになるし、知の交流が全国的に広がる可能性があった。もちろん、そのようなものさしとして耐えられるかどうかは、検証されねばならないし、問題は全国標準ではなく、世界標準であるかどうかだった。
☆しかし、それはたとえマガイモノでもOECD/PISAに目が向いている限り、世界標準とは何か常に問えたわけである。抽出方式でも問えると言われるかもしれない。しかし、問題は誰が問うのかである。文科省が問うても仕方がないのである。生徒や教師一人ひとりが現場で問うという批判的思考のトレーニングこそが重要だったのである。
☆この④の役割への喪失が、またも文科省、つまり国家主導の学力調査に立ち戻ってしまった・・・。
☆全国学力テストは、全員方式であると、⑤の「授業―テスト―評価のシステムの見える化・測る化が定着することによる学びの自立促進」ができたのである。しかもこの見える化・測る化には、ITとWebが必須であるから、Webベースな学習が生徒1人ひとり可能になったのである。これぞ教育イノベーションであり、仕分けして節約するより、経済を大活性化するチャンスだったのである。
☆それどころか、家族がこの授業―テスト―評価のシステムをハード面ではなく、ソフト面から学ぶ必要があり、国民の全体を世界標準の意識にパラダイムシフトするチャンスだったのである。
☆いずれにしても、IT産業の技術革新、コミュニケーションのハード、ソフト両面の技術革新、英語教育の促進、イノベーションへの関心度を高めるなど、経済や文化のグレードをアップさせる大チャンスだった。
☆しかし、今回の抽出方式は、それらの期待を一挙に冷やしたのである。それが私立学校の参加率減少の意味であり、公立が70%以上参加しているのに、私立学校は70%以上が参加しないというコントラストの意味なのである。
☆結局、私立学校は、今まで通り、学習指導要領を包含しつつも、独自の世界標準の教育プログラムをデザインしながら進んでいけばよいという路線に落ち着いたという事だろう。
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