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戸板の時代先取り理念「知好楽」

☆戸板中の校長杉岡先生と募集対策室の室長伊藤先生とお会いした。杉岡校長は、ご自身でマナー教育の授業を実践している。

☆しかし、この授業は礼儀作法を教えるのが目的ではない。前向きに生きる型、戸板生としての自覚とプライドの型、人を思いやる気持ちの型など、精神的なものさしとしての枠や型を形成する授業。

☆それゆえ、おのずと創立者戸板関子の生き様と「知好楽」という論語発想の思想を学ぶ場となっている。戸板関子の生き様を表現するフレーズとして、杉岡校長は、

Girls be ambitious !

☆というメッセージを生徒に投げかける。ポジティブに、前向きに、どんな困難をも乗り越える意欲と情熱を燃やし、いっしょに未来を切り拓いていこうと。

☆そしてマナー教育で、「前向き感」を育て、学力向上と人間力形成のための原動力を作ろうというのである。

☆この「前向き感」こそ、戸板の教育理念である「知好楽」そのものであり、これが実に時代を先取りしたイデーなのである。「知好楽」とは、論語の一節「知之者、不如好之者。好之者、不如楽之者。」(これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず)に由来するということであるが、杉岡校長のお話をお聞きしていると、要するに、

なぜだろうと考える「知」

旺盛な好奇心の「好」

オープン・マインドにする「楽」

論語という「倫理性」

☆という要素に置き換えることができるのである。そこで、実に倫理なきポストモダンとか知識基盤社会と呼ばれている時代のニーズを先取りしたイデーだというところで共鳴した。

☆それにしても孔子というのはすごい思想家で、私学人であり日本資本主義の父である渋沢栄一翁に「論語と算盤」を書かせ、2つのJを提唱したやはり私学人内村鑑三とともに、お金を稼ぐこと自体は問題ない、ただし善に使えばねと語らせたほど、大きな影響を時代を超えて伝播した偉人。

☆≪私学の系譜≫をたどると、論語、聖書、啓蒙思想のいずれかに行きつくのであるが、実は啓蒙思想家は、当時孔子を好んで読んでいたということである。

☆ポストモダンとか知識基盤社会のイデーは、実はロールズ、ローティ、ハーバーマス、サンデルなどの思想をたどればわかるように、啓蒙思想家の自然状態と社会をどのように脱構築するかにかかっている。

☆時代の通奏低音である思想史から考えても戸板中の「知好楽」の理念や思いは時代を先取りしていたのである。

☆そしてその思いは、最も重要な授業空間にも浸透している。生徒とともに教師も「知好楽」をあらゆるところで実践するのである。批判的思考・好奇心・オープンマインドを背景にもっている「知好楽」はノーベル賞受賞者、ファインマンが大事にした科学的視点でもあるから、なおさらである。

☆高校生の読書ノートを拝見したが、どのページを開いても「知好楽」への想いが刷り込まれているではないか。

P4281597

☆理念をデザインする遊び心こそ理念そのものの発露であるが、大事なことは、このようなノートが教科ごと学年ごとたくさん用意されていることだ。

☆大量の情報を端的に要約してく型を形成する役割を果たしているのが、戸板の多様なノートである。

☆ノートをどのようにデザインするか、教師がモデルを示し、高校2年生以降は、自分なりのノートテイキングの型を創出していく。

☆6年間のノートの軌跡が、生徒自身にとって自らの成長の痕跡であり、振り返るメタ認知という学力向上、批判的精神の修得の階梯なのである。学芸員や司書教諭の資格も持っている伊藤先生の知のデザインのお話も尽きることがなかった。

☆杉岡校長と伊藤先生の言葉は、汲めども尽きぬこんこんとわき出る泉の如くであった。戸板の奥深さを象徴しているのではないか。

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