« 私立学校の教育と受験市場のズレ④ | トップページ | 私立中高の挑戦 新番組始まる »

私立中学の春一番合同説明会

☆昨日(4月29日)、立川で、私立中高一貫校の合同説明会、春一番が開催された。

10

☆昨年よりも参加者は多かったということだから、中学受験の熱が冷めているわけではなさそうだ。この間、ある学校で勉強会をやったときに、中学受験の家庭層は本当に苅谷剛彦さんが提唱する階層化日本と一致するのだろうかという議論になった。

☆そのとき描いたのが、次のような座標軸。

Photo

☆苅谷さんのいう階層構造は、経済的階級の問題。教育は大衆化され、学歴を決定するのは富裕層であればあるほど大きな要因となるらしい。

☆だから、この長引く経済不況は、中学受験に影響するのではないか?大衆化社会とは、J.S.ミルのような理想的功利主義ではなく、理念なき功利主義だから、なるべくお金をかけずに学歴資本を手に入れなければ、将来が不安だということになる。

☆公立に行って、私立に行く分お金をためて、もっと他のものに投資しようということになるのだろうか。

☆おそらくこのように考える家庭層も多いかもしれない。しかし、経済的階層というより、音楽や芸術、海外の知識人に興味を持っている層。ハーバード大学のサンデル教授ならば、高級ということばを使うだろうか、ともあれ高級知性層という苅谷さんの分析ではでてこないもう一つの軸を考える必要があるだろう。

☆日本には階級は存在しないから、そんなのは意味がない・・・と言われるであろうが、もともと東京の私立中学に進学するのは、全国の小学校卒業生の3%に過ぎず、そこの分析が大学研究者によってなされてこなかっただけで、認識していないものは存在しないというのでは、むしろ科学的ではないだろう。

☆学歴資本という大衆化された教育の世界は受験市場が支配しているから、おのずと経済階層の問題になっているだけ。私学市場というマーケットは認識されて来なかったので、この領域が不可知フィールドになっていただけだ。

☆私立学校が存続し続ける限り、この文化資本の部分も存続し続ける。文化資本は理念(本源的未規定性ではあるが)を座標軸に未来世界を作り続ける高級知性を欲するのである。それゆえ、日本社会にはなくてはならない存在である。

☆話がだいぶそれた。春一番に話を戻そう。この時期の私学人は、実におもしろいのだ。というのも、保護者と話すこの時期は、まだこれから新しい企画を盛り込むかどうか手探りの段階だからだ。受験生や保護者と話しながら、今後の新企画を練るのである。

☆だから、どういう保護者と出会うかによって、私立学校の未来は変わるのである。この時期から参加する保護者はある意味意識が高いから、受験生や保護者のためだけではなく、私学人にとっても貴重なアハ体験をするチャンスなのである。

☆つまり、私学は、教師と保護者が共に創る理念共同体であるというのがよくわかる合同説明会なのである。

☆ともあれ、それゆえか、忙しいのに、合間を縫って話しに応じてくれる私学人がいる。保護者と対話している間に、話す内容が湧きでてきたからだろう。そのような高感度なセンスの私学人からは、新しいことを考えているのが伝わってくる。たいていは、6月が過ぎないと発表できない内容ばかりだし、まだ形になっていないアイデアのものもある。この創意工夫へのあくなき意志には、いつも頭が下がる。

☆八雲の横山先生は、6月にあるすてきなプログラムを予定しているということだった。さりげなくというか当たり前のように、いつも語られるが、そのたびにすごいことではないかと思い知らされる。武蔵野女子学院の斉藤先生は、「生徒が語るMJ」という冊子を手渡してくれた。卒業生がある意味MJのキャリアガイダンスをしているような語りを集めたもので、ここからさらに新たな企画を考えているご様子だった。

☆白梅学園清修の橋屋先生も、5月から夏休みにかけて続く学びとグローバルなプログラムの可能性についてちらりと語られた。心の中で「オオー!!」と叫んでしまった。藤村女子の柳館先生は、女子教育の新たな可能性について語られた。ウム私学人だなぁと感じた。

☆文華女子の梅田先生は、新たな戦略を含みつつ・・・。なるほど、なるほど。宝仙理数インターの富士先生も今日のところは時間がないので、山ほどのアイデアはいずれということだった。

☆明星の北原校長、廣瀬先生も、変貌しつつある明星の仕掛け人。明星の進化について豊富な情報があるということだった。

☆NTSから分社化して、大々的に私学を応援する会社を立ち上げた元同僚の落合氏や鈴木氏もやってきていた。なるほどなぁ。受験市場と私学市場のシナジー効果を作れればよいねとエールを互いに贈った。

☆鴎友学園女子の吉野教頭からは、会終了後の刹那に、今後の私立学校のビジョンについて話をお聞きできた。鴎友学園女子は、もともと、その「慈愛と誠実と創造」という理念をあらゆる教育の局面に浸透させ、実績をあげるのに成功した私学で、すでに全国から多くの学校の先生方が視察に訪れている。だから、私立学校の教育について、自分の学校以上に広い視野と深い洞察力で考察している学校である。もちろん、その考察が、鴎友学園女子自身に吸収されるのは言うまでもない。まさに黄金律そのままなのだ。

☆まだまだやらねばならないことがたくさんあるということだ。それは何か。これからわかりますよということである。

☆先生方の話をお聞きして、私なりに私学市場の位置づけのイメージが次のようにできてきた。これについてはいずれまた。春一番の風は、未来への香りをふりまいて、あっという間にかなたに・・・。

Photo_2

|

« 私立学校の教育と受験市場のズレ④ | トップページ | 私立中高の挑戦 新番組始まる »

クオリティスクール」カテゴリの記事