私立学校の教育と受験市場のズレ②
☆私立学校の枠の大きさとズレのイメージを書いてみた。私立学校の教育の枠が受験市場をはみ出ている場合、同じくらいの場合、小さい場合とざっくり枠の大きさを3つにわけ、さらに重なり具合を描いてみた。
☆そして生徒募集戦略が成功しやすい重なり具合に並べ替えた。並べ方は、Aに近い方が生徒募集戦略は成功しやすいという前提に立っている。
☆Aは、受験市場・メディアがどう見ようと、それが錯視であろうと、結果的に欲求は満たされるので、生徒は集まりやすい。この場合、学校当局は、あえて何も言わないという表現力をとる。当局の教育をどのように感じるかは価値相対主義でよいのではないかという姿勢。
☆Bは、受験市場やメディアの欲求枠に合わせようという戦略の場合とほぼ共通部分が受験市場の錯覚という場合もあるあるだろうが、いずれにしても成功をおさめているケース。教育の質の枠という意味では、Cの学校よりも小さいのではあるが、Cはズレを表現するために、受験市場の枠との錯覚共通部分が少なくなる。ズレてしまった教育の枠の部分は、何らかの表現で受験市場ではなく、保護者や受験生に直接アピールする私学市場を形成しなければならなくなる。ここで成功すれば、BとCは生徒募集においては互角になるだろう。
☆どうしてあの学校が人気で、この質の高い教育を実践している学校に生徒が集まらないのだろうと疑問に思うことがあるだろうが、それはこんなズレがあるためなのだろう。
☆Dは、学校自体の教育の質の枠が、受験市場の欲求枠にほぼほぼ収まってしまっているケース。BやDの場合、受験市場に参加している会員の意識も、同じ欲求枠の場合が多い。中学受験は大衆化しているので、そこを狙った戦略をまず立てることによって、サバイバルしようということになりがち。
☆Eは、枠の大きさは同じなのだが、大学進学実績や授業、コミュニケーションの考え方や価値観が違う、つまりズレがあることを結果的に表現している学校のケース。Fもズレのあり方は同じ。ただ、学校の教育の枠の方が受験市場の欲求枠より小さいわけだ。
☆それでも、GやHのように完全にズレていることを主張する学校に比べ、生徒は集まるわけだ。
☆何が正しいか正しくないかは問題ではない。ズレがあることの確認が大事なのである。共通部分以外にはズレが2つある。それは受験市場と私学市場それぞれ独自の市場である。そして共通部分が、受験市場の錯視に拠る場合と共鳴している場合とにわかれ、前者のように一見共通しているが実は見方が違うという3つ目のズレがある。
☆こうして3つのズレがあきらかになったわけだが、受験市場のアピールは強烈であるのに比べ、私学市場のアピールはまだまだ弱いと感じる。また、共通部分のズレの部分は、私立学校の交渉力=戦略力の場そのものであり、興味深い。
☆そして、従来はこの交渉力としての戦略力が威力を発揮してきたのである。しかし、生徒と教師の真剣勝負の授業の部分をいよいよ表現する私学市場の表現力の開発が、今日大事なのである。
☆表現力の場のシフトが少しずつ起きているのである。それなのに、交渉力としての戦略力の場で、新しい授業空間を表現しようとするから、本質を汲み取れなくなる。私学市場の独自の表現はいかにして可能か。それにはまず私学市場という場の明確な認識が必要になる。
☆しかし、それでは、GやHのケースになるではないかと言われるかもしれないが、実は私学市場の場で新しい授業空間を表現するチャレンジは、教育の質の枠を拡大させるから、AやCになるのである。だから、たとえば、Bは交渉力の場を私学市場に広げることになるのである。
☆さて、私学市場に広げるにはどうしたらよいのか。それは3つある。私学市場独自のメディアを持つことである。各学校がホームページでブログを書くようになっているが、それは1つの兆しである。しかし、その表現はまだ受験市場の欲求枠を意識しすぎている場合が多い。あとは、企業広告のない同人誌的な広報誌の発行である。合同説明会で実は冊子を編集して配布しているが、それも兆しの1つ。ただし、合同説明会の説明資料になっているので、広がりを生み出せない。マスメディアの意識改革も重要。これは5月8日東京フォーラムで開催される東京の私立中高一貫校の合同説明会で、かなり戦略的に明快に遂行されている。
☆もう1つは新しい授業の創出である。これはある意味教育産業(熟産業ではなく)のサポートを活用するとよい。ただし、教育産業も学習指導要領や受験市場的表現を装備しているから(これは私学市場がそれほど強くなかったからやむを得ない)、それを解除することが条件であるが。熟産業と教育産業の競争の演出こそ私学市場にとっては欠かせないだろう。
☆そして最後の1つは、私学市場のグローバル化である。新しい授業空間の条件の1つは、世界標準である。これは、グローバル・コードとなるから、海外の知のインターフェースが可能になる。
☆おそらく、私学市場のグローバル拠点を創出することがポイントになるだろう。
☆そのうえで、新しい授業空間の表現はいかにしたら可能か?ということになる。授業―テスト(振り返り)―評価の新しいシステムの表現はいかにしたら可能なのだろうか?ウムムムム・・・。それが問題なのだ。
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