白梅学園清修 教育の手ごたえ
☆本日5日、白梅学園清修で第2回目の学校説明会が行われた。50組ほど参加者がいた。用意された会場の席は満席だった。
☆スモールサイズで、丁寧に説明会を実施するスタイルに、先生方は、ある自信というか何か手ごたえを感じている様子だった。
☆その証拠に、無駄に笑顔をたれ流さない。目と目が自然に合ったとき、精選された静かで深い笑顔を見せる。5年目を迎え凄みのある品に、今までの苦労が昇華されている様子が伝わってくる。
☆今までは、とにかくサプライズの連続だった。クラブ活動の代わりにエリコラというスペシャルで複眼的なアクティビティをやってのけたり(今ももちろん継続中)、EU研修に乗り出したり、英国研修に乗り出したり、校則の代わりに、いきなりコモンセンスである普遍法を持ち出したり、ラグビーのキャプテンシーをアルティメットで代用したり、生徒会(清修では「清徒会」と呼ぶ)のメンバーが、後輩のチューター役を行うオリエンテーションをやってのけたり、スピーチコンテスト&プレゼンテーションのコンテストを実施したり、ディズニーシーで全学年で懇親のためのイベントを行ったり・・・。
☆それはもう、清修はアリス・イン・ワンダーランドさながらだった。実は今もそうではあるが、ファンタジーの国ではない。リアルな世界で繰り広げる優れた知性と豊かな感性を、自ら生徒が創りだす世界になっている。
☆数学の戸塚先生は、自らも模擬試験を解いて、全国の東大理Ⅰ志望者の中でトップをとれる点数をはじきだした。数学だけでなく、生徒と一緒にすべての教科を勉強する。
☆しかし、そんなサプライズな情熱と同時に、アリス・イン・ワンダーランドの背景にあるパラドクスを解く論証をあらゆる場面で説きまわる。はじめはみな面食らうが、この重要性に社会の先生方が気付き始める。
☆社会科の先生方は座標系で歴史のスペクタクルを表現し、清修の理念を位置づける。その話についていけるように、生徒も必死になる。しかし、それが腑に落ちる瞬間は、つかずはなれず生徒とともにいる生活の中でなのだ。生徒が必要だと思ったときに、先生方は出動する。
☆今日の体験授業で、社会科の先生が宮崎駿作品の背景に、近代が覆い隠していた人間存在の真の姿が隠されている事を講義されていた。それはグリム童話の背景に隠された欧州の人間の故郷をとりだす記号論の手法だと、国語科の先生が教えてくれた。
☆なぜこれが中学入試と関係があるのか?大ありなのだ。中学受験の国語のベースは池上嘉彦先生の言語論や記号論がある。最近では、直接池上先生の文章は出題されないが、今も脈々とその言語や記号の構造論はベースである。
☆池上先生の最後の東大の講義は、シンデレラの隠喩を解き明かす講義だった。まさに、今日の宮崎駿作品の読み解きと同じだ。これを社会科の教師がやってのけるというのがすごい。
☆それから、理科のイソジンとイモをつかう実験は最高だった。何が最高かというと、1つは、実験という体験から、因果関係を導き出すプロセスを、参加した生徒がワクワクしながら体験している様子に心打たれたのだが、もう1つ、思わず涙腺がゆるんでしまったのだが(歳のせいか最近ゆるみっぱなしなのだが)、理科の先生のきめの細かいコミュニケーションなのだ。つかず離れず、実験道具の使い方やはじめて顔を合わせるチームメンバーなのにそれをとりまとめるロールプレイを各チームに生み出していくフォロワーシップに、日頃からやっていなければ、こうはでききないという教師の日常の涙ぐましい創意工夫が見えたのである。
☆まさにアリス・イン・ワンダーランドなのだが、大きな違いはチェシャ猫はいないということである。あるとしたら本物の笑顔なのだ。
☆今日も、柴田副校長は、どんなに良い教材、カリキュラム、環境、教師を用意しても、生徒の内面に自発性が生まれない限り、難関大学に入れるかもしれないが、人間にはなれない。自発性を生み出せる教育を行うのだという不退転の決意を表明していたが、それが染み渡っている学校に成長したということだろう。
☆とにかく、先生方のコミュニケーションのリズムは「序破急」の響きを奏でている。ゆっくり、とてもゆっくりなのだ、最初は。そしてやがて殻を破ったかのように、動き出す。そこには無駄な動きはないから、破るや一挙に龍の如くある目標に向けかけのぼる。そのときの龍の眼差しは笑みを浮かべているのだが、そんな感じの表現力がある。
☆このような独特の学校だから、ちょっとのぞいてみようかという気軽さがない。参加している家族の、時代の要請に突き動かされている構えが真剣そのものだ。清修の説明会に行くかいかないかという段階で、すでに学校選択は始まっている。生徒募集は量ではない質であるという高い志に改めて感服した。
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