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海城と帰国生が意味するコト

すでに書いたように、来春から海城学園が、高校入試を廃止し、中学から帰国生を30人募集することを決めた

☆この戦術の背景にある戦略は何か?内部的にはすでに帰国生を迎える準備が終わったから、いよいよそれを実行に移そうという、発想の現実化が企図されているだろう。

☆外部的には、2012年に各国の首脳の選挙などの世界の変化を見据えているということだと思う。つまり、ガラパゴス日本だとか内向き日本だとか言われているが、言われているということは、そこを乗り越える問題解決を政財界は準備しているということを示唆している。

☆東大というのは、その出自から矛盾をはらんでいる。つまり官僚的組織を強化する動きと脱官僚組織を促進する動き。そういう意味では、日本の経済政治や文化芸術までカバーしてきた文化装置である。

☆このポジショニングパワーが変わらない以上、東大がどのような動きをしているのかをウォッチしておくことは最先端の動きをフォーサイト(フォーキャストではなく^^)できる。

☆東大は、基本路線は知の構造化と自律分散協調系というベクトルで進んでいる。科学コミュニケーションや美学、i.schoolの動きなどがそうである。

☆欧米やBRICsのエスタブリッシュな中等教育のプログラムを、大学でまず取り入れようということだろう。このプログラムはすでにAPUでは当たり前だが、まだそのことに日本は気づいていない。ともかく、東大から上意下達方式で、他の大学も変わっていくだろうから、この手のプログラムが主流になっていくことは想定できる。

☆実は帰国生や留学生を受け入れるには、かつてのように日本流儀に合わせろ!などというパワハラではなく、世界標準にし、議論し合いながら互いの問題意識をマッチングするシステムを持っていなければならない。

☆APUは始めから在学生の50%が留学生だから、このシステムが当たり前なのだ。だいたい改革は中心からではなく周辺から起こるものだから、APUの重要性をキャッチできるかどうかは未来のセンスがあるかどうかだ。それはともかく、パワーポジションが変わることを東大はすでに意識している。だから、手を打っている。

☆20世紀型から21世紀型の国造りになるということは、明治以来のパワーポジションが変わるということだろう。

☆ということは、これは大学レベルだけではなく、中等教育レベルも同じことが言える。デザイン思考やプロジェクト・ベースプログラム、美学的(美術ではない)プログラムなどの準備をしているところは、パワーポジションの変化に対応できる。

☆対応できるというよりも、変化を牽引するリーダーシップを発揮することになる。2012年、この変化は加速するだろう。

☆すでにその兆しは、神奈川県で見ることができる。栄光は聖光にポジションを奪われた。フェリス、横浜共立、横浜雙葉が、神奈川エリアの女子御三家だといわれてきたが、洗足学園がその一角を崩している。

☆聖光にしても洗足にしても帰国生入試は大成功しているし、大学受験指導以上のプログラムも豊かである。ある意味、新しいイノベーションを開発しているから、トラディショナルな栄光やフェリス、横浜共立、横浜雙葉を乗り越えてしまうのは時間の問題である。もっとも、聖光はそうはいっても大学受験指導はメインストリームだし、数学のM先生が他の中等教育にハンティングされてしまっているから、聖光も盤石だとは言えないだろう。

☆さて、どこが追撃するのか?それはたぶん・・・。来年以降証明されるだろうから、そこは楽しみにしておこう。洗足に関しては、地政学的に言って、東京にも近いし、田園都市線には、まだまだ受験生は溢れているわけだから、当面盤石だと思う。

☆というわけで、東京エリアでも同じことが起こる。御三家では、まず武蔵と雙葉が危うい。当局は御三家などというカテゴリーはまったく関係ないと言うだろうから、どうでもよいのかもしれないが、受験市場としてはパワーポジションは気になる。それがよいかどうかはわからない。しかし、かつての名門は、伝統主義では生き残れない。OB・OGは頑張るだろうが、当局自体が頑張らなければ、どうなるかは火を見るよりも明らかだろう。

☆武蔵は、学問的な雰囲気が御三家としてのポジションニングを維持してきたが、その学問がガラリと変わってきたのである。そこに追いつけるだろうか?そこが問題だ。

☆そういうわけで海城学園の戦略は、東京エリアの中学受験市場のパワーポジションを大きく変えるところにあるのだろう。機は熟したというわけだ。

☆学問的雰囲気も十分あるし、時代を見据えた教育プログラムも完成した。あとは学内が英語と日本語ともう1つの外国語で、つまり多言語であふれかえったなら、次は開成との一騎打ちになるだろう。すでに駒場東邦や武蔵、桐朋、慶應普通部などは質量ともに凌駕していると考えてよい。

☆ところで、帰国生の重要な特徴であるが、彼らは発想で生きているというのが私の印象だ。だから、その発想を6年間で活かせるプログラムが用意されているところは、発展する。日本では、まずは基礎基本、知識。それから発想だというのが基本的な教育観。しかし、帰国生は、まず発想。そして必要だと感じた瞬間、知識の連鎖を追究する。発想から知識、そして脱発想・脱技術というデザイン思考ができる。

☆一時帰国している高校2年生と小論文のワークショップをやるとその違いが鮮明だ。日本の高校2年生ともワークショップをやる機会があるが、たいがいはキョトンとする。中にはそうではなく、発想力が豊かな生徒もいるが、そのような生徒は必ずしも模擬試験で高偏差値を叩き出さない。この偏差値指標で、彼らの才能の芽が摘まれてしまうのは、世界の損失であると思うのだが・・・。

☆帰国生との小論文のワークショップは、マインドマップは使わない。座標系マップを使う。マインドマップは、プロジェクト・ベース学習では有効であるが、受験直前の小論文ワークショップでは座標系の方が、問題解決や自分の思考のポジショニングを決めるのに、わかりやすい。

☆宮台真司さんもよく座標系マップを簡易に使うが、帰国生はその話に簡単についていけるし、自分で座標軸を決めながら自分の思考を組み立てていける。

☆能力の問題ではなく、帰国生の教育環境がそうさせるのである。

☆そうそう、ユニクロも2012年から、社内公用語を英語にするようだ。

柳井正会長兼社長は毎日新聞の取材に「日本の会社が世界企業として生き残るため」と語った。導入までに「海外で業務ができる最低限の水準」(柳井会長)として、国際英語能力テスト「TOEIC」で700点以上の取得を求める。

☆業界でユニクロがパワーポジションを変えたように、大学や教育でもそれは起こるのは必然だろう。どこがそこに着手するかだけだ。

☆それにしても、最終的には麻布と海城の教育の質の競争になるわけだが、それはそれで私学市場としてはよいことではあるまいか。

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