広尾学園の土台は科学的思考③
広尾学園の土台は科学的思考②のつづき。
☆授業が、教師が、学園が楽しい。6年間何をやってくれるのかという保護者の期待にこたえる挑戦をつづけている学校が広尾学園であるというのが結論であるが、そのような広学エネルギーはどこにあるのか?
☆それは外から見ていたのでは、やはりにわかにはわからない。新鮮で多様な教育実践が行われ、魅力的であることはわかったが、それを生み出すエネルギーはどこにあるのかということになると、それはそう簡単にわかるはずはない。
☆だから、あくまでこれも独断と偏見になるのだが、それは教材とテストと評価が一体になっていて、形成的評価に近い、授業の中で生徒を育てるシステム構築が教師一丸となって行われているという点にあるのではないだろうか。
☆教師は、教科書を使えば、教材を作る必要はない。テストもその教科書に従ってつくれば、楽に作れはするが、それは教科書を覚えているかどうかをチェックするためのもものにすぎず、生徒の思考の構造がどこまで発達しているのかは測ることができない。評価も単純に素点と平均点と偏差値を出すだけでは、母集団の中での位置づけがわかるだけで、生徒が自分の学びをどのように改善していけばよいのかわからない。
☆意外にも、このような教材―テスト―評価のサイクルは、現在の私たちの国の教育においては、あまりにも日常的風景なのである。そしてこれがガラパゴス日本の教育のあり方でもある。世界標準に肩を並べることができないのは、こんな日常の教育のあり方に原因があるのかもしれない。
☆ところが、広尾学園の形成的評価に近い教材―テスト―評価作りは、そのようなものとは全く違うのである。まず科学や学問の最前線の成果を意識した大学入試問題を探求し、それを教材やテストに活かしていく。この作業は、教科書を超えた学問的な興味と関心を常に抱いていないと出来ない作業である。
☆このリサーチを、各教科の先生方が一丸となってミーティングを重ねて行っていく。したがって、教材―定期テスト―大学入試問題―学問の最前線へと結びついていく仕掛けになっている。そしてその評価であるが、なんといっても、毎回定期テストが終わると、「問題・解答・解説集」という200ページを超える冊子が配布され、それが今度はテキストになるわけだから、自分がなぜ間違ったかという部分の改善だけではなく、自分が学んだ分野全体を鳥瞰し直すことができる仕掛けになっている。
☆こういう非常に豊かな背景や教養、学問が横たわっている「教材―テスト―評価」に基づく面談が、どれほど自分を見つめ、社会や世界にどうしたら結び付いていけるのかモチベーションをアップさせる知的刺激になるかは、測りしれないだろう。
☆しかし、このような学問背景が支えている「教材―テスト―評価」のサイクルをどの学年も毎回徹底するには、教師力こそ重要になってくることは言うまでもあるまい。この教師力は、単純に教師の仕事であることを超えて使命感がなければできないだろう。
☆この使命感をいかにしてすべての教員が共有できるのだろうか。大橋学園長のリーダーシップの内実を知りたいものであるが、それは慧眼を有したジャーナリストに期待することにする。
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