森上教育研究所の論説必見。
☆森上教育研究所の発行している最近号「中学受験と私学中等教育 第152号」の巻頭論文は必見である。どこか今までとトーンに変化があるこの熱は、どうしたのだろうかと少し驚いたが、はっきりと公立高校の政策を批判し、一方で第二期私学危機(中学受験の鎮静化)を乗り越えるチャンスとして、入試問題で良問を出すように質の向上を要求しているところは、大いに賛成である。
☆最近号AERAやすでに昨年各自治体で、定時制高校の入学者が増えている背景に、公立校高校の入試が配分型から選抜型にシフトしていることが言及され、批判されていたが、同誌でも、この点を鋭く批判している。
公立高校のこの政策が果たして公共政策として妥当なものか否かは、この定時制高校へ追いやられる生徒の実態を考えれば明らかで、セーフティネットが公立無償化だけではなく、一方で低学力者のリターンマッチ専門校―いわばリベンジ専門校として、例えばシンガポールのそれのように設けられるべきであろう。
☆昨年までの定時制高校入学者増は、長引く経済不況が原因で、働きながら高校に通う生徒の増加であると考えられてきたが、高校無償化政策によって、学力格差の問題が横たわっていることが急に明瞭になってきたということなのである。
☆そして、この低学力化にはどめをかけるには、中学の教育の質の向上問題があるが、そこに期待はできない。たとえ新学習指導要領ができあがっても、同じ条件下では格差が縮まるはずがなく、従来の成績上位者は上位者のままで、そうでない生徒は、そのままであることに変わりはないのである。
☆そこに、質の向上の戦略を短い時間で行える私立中学の柔軟性が活躍するチャンスがあると。だから、より質の高い問題を出題し、教育の質の高さをきちっと表現できている学校を消費者が選択するようになれば、私立学校全体が、質向上の競争を行い、そこに再び私立中学受験に消費者がなだれこむ好機が訪れるだろうというわけである。
☆「公立中高一貫校の理・社の問題は概ね私立中学のそれの質を上回っていて、かつよく考えられ、それでいて難しくない」という指摘は、多少疑問がないわけではない(というのもテストは採点基準こそが重要だからである)が、学校の顔である入試問題の質を磨くことが、生徒募集戦略の1つの大きな柱であるという提言は傾聴に値する。
☆いずれにしても、学校選択の基準のビッグワードが、大学進学実績→偏差値→シラバス→授業→入試問題(テスト)とシフトしていることを予言するきっかけは、森上教育研究所の研究のどのへんから形成されているのだろうか・・・。
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