全国学力テスト 2010年の結果出る
☆「平成22年度 全国学力・学習状況調査 結果概要・集計結果」について発表された。内容・結果については、「国立教育政策研究所」のサイトで見ることができる。
☆毎年、読解問題については、岡部憲治氏といっしょに分析しているが、私たちが予想した平均点は、小学校の国語Bについては大きなズレがあった。具体的な分析などは、今後「世界標準の読解力―著書・岡部憲治」サイトで展開されていくので、ご覧いただきたいが、ここでは今回の予想平均点と結果平均点のズレについて簡単に触れたい。
☆大問[2]の一の(2)の採点方法と二の正答率は、正当性と信頼性の問題がある。(2)の方は、2つの解答が両方合っていて正解としている(いわゆる「完全解答」)。それゆえ、本来、片方ずつなら80%を超えるはずなのに、73.2%となっている。それはともかく、正答率の高低よりも、完全解答という採点方法は思考過程が見えなくなってしまい、その正答率の意味がわからない。正当な採点方法ではない。
☆たしかに、誤答分析はされているが、これでは生徒や現場の教師は、正答率だけからは何も得られなくなる。問題としては信頼性のあるすてきな問題であった。読者の視点の確認をさせるメタ認知の問題になっているからである。
☆二の感想あるいは考えを80字以内で書く問題の正答率が、82,5%というのは、(2)の問題の正答率より高くなっていて疑問が残る。思考過程が複雑な問いの正答率が高くなっているのは一貫性がない。採点許容が相当広かったのだと予想する。
☆ともあれ、分析報告には、この問いの位置づけをこのように設定している。
「物語を読んで思ったことや考えたことを、理由を明確にしてまとめて表すには、物語の内容面、構成や表現面など、様々な特徴をとらえた上で、それらに対する自分の考えを明確にもつことができるようにすることが重要である」
☆このような複雑な思考過程の問題の正答率が82.5%だというのは喜ばしい限りだが、もっと単純な問題の正答率がこれよりも低いというのは、信頼性に疑問が残る。
☆大問[3]の一は問題の正当性に疑問がある。二は問題の正当性、採点の信頼性に疑問がある。一は、プレゼンの展開を把握できるかどうかを問うているが、指示語に気づけばすぐに解ける問題になっっていて、作問の意図には合っていないから、この問題が80%前後で来ているから、プレゼンの展開の構成を把握しているとは言えない。
☆二に関しては、発表しつつ聞き手に質問をするのはなぜかという問題だが、解答の着目のレベルが違いすぎる。聞き手の関心に着目する解答、プレゼンの内容が明確になることに対し着目する解答、プレゼンの双方向スタイルに着目する解答、共感に着目する解答など、すべて正解にしている。正解は一つではないというのはわかるが、コミュニケーションの定義をあいまいなまま放置する問題や採点でよいのか問題である。
☆大問[4]の正答率は65.7%。採点の信頼性に多少疑問は残るが、まずまずである。ところがこの問いを考える思考の過程や構造は、大問[2]の二と同じである。それなのに、片方は65.7%、もう片方は82,5%となるのは、[4]が最終問題であるということを考慮しても、ズレが大きすぎる。
☆アメリカの教育学では、テスト測定学が学問として成立している。このベースはPISAにも活用されている。全国学力テストが、もしもPISA型であるとするならば、このテスト測定学をきちんと導入することが必要だろう。
☆思考や学びの基準を調査しているPISAとは違い、全国学力テストの場合は、正答率が独り歩きする可能性がある。PISAは、正答率のようなスコアを算出しはするが、それはあくまで形成的アセスメントという評価を見える化・測る化することに目的がある。その視点がおそらく欠如しているのが、全国学力テストだろう。それが、今回の予想平均点と結果平均点のズレに表れているのである。
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