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2012年の変化にいかに対応するか⑩

2012年の変化にいかに対応するか⑨のつづき。

☆朝日新聞(2007年7月8日)によると、

「東大など難関大学の現役合格15人以上」。東京都教育委員会は8日、現在7校を指定している都立高校の「進学指導重点校」の選定に当たって、2013年度からこんな基準を導入することを決めた。重点校に選ばれると教員配置の優遇措置があるが、伝統校といえども実績次第で指定を外すことを打ち出して、一層の「努力」を促すという。私立に対抗し、様々な進学指導策を打ち出す都教委の「強化路線」の一つだ。

東教委の報道発表資料には、こうある。

東京都教育委員会は、平成13年度以降、大学進学を組織的・計画的に推進し、都立高校全体をけん引する役割を担う高校として、進学指導重点校7校を指定してきた。(現在の指定期間は平成24年度まで)

進学指導重点校には、将来の日本社会のリーダーとなりうる高い資質の生徒が入学している。その潜在的能力からすれば、高校3年間の指導を一層充実させることにより、大学合格実績をさらに向上させることが可能である。

進学指導重点校の選定基準及び目標を設定し、その達成を図ることにより、都立高校に対する都民の期待に一層こたえていく。

☆社会の経済的なニーズに応える1つの戦略だろうが、なぜこんなに格差社会を肯定するのだろう。これは都民が求めていることなのだろうか?

☆「都立高校全体をけん引する役割を担う高校として」とあるが、生徒1人ひとりの学力と成長の発達に、それは本当に必要なのだろうか。

☆「進学指導重点校には、将来の日本社会のリーダーとなりうる高い資質の生徒が入学している」とあるが、目や耳を疑うフレーズだ。それとも、世界で活躍するのは、進学指導重点校以外で、日本は進学指導重点校に任せよとでもいうことか?

☆「その(選定基準・目標)達成を図ることにより、都立高校に対する都民の期待に一層こたえていく。」とあるが、一部の生徒の環境優遇を都民が期待しているとは思えない。

☆2012年には、次の選定のために大騒ぎになっている可能性があるし、この露骨な≪官学の系譜≫復権路線は変わりようもない。

☆もっとも、浦崎太郎氏のように、公立の側から、この流れの警鐘を鳴らしている高邁で果敢な人もいる。

☆人づくりなき進学指導重点主義が、経済的ニーズに応えるものであるかもしれないが、それではうまくいかないことが、89年ベルリンの壁崩壊後、何度もクラッシュする市場経済とテロの連続という社会現象に直面するだけでも明らかだ。

☆ニーズを無視することなく、時代の要請に耳を傾け人づくりの原点に立ち返る≪私学の系譜≫の社会や世界を変える役割はさらに重要になる。

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