2012年の変化にいかに対応するか⑥
2012年の変化にいかに対応するか⑤のつづき。
☆産経新聞(2010年7月4日)に興味深い記事が掲載されていた。W杯で、ドイツサッカー4強入りは、M世代の活躍によるというもの。
サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で強豪イングランド、アルゼンチンを撃破したドイツの原動力は移民背景を持つ「M世代」と呼ばれる選手たちだ。「多文化」を意味するドイツ語のイニシャルから命名された。多文化主義を取り入れたドイツは通算で4度目、東西統一後では初となる優勝を目指す。
☆ドイツの移民問題、特にトルコ系移民のドイツ国内での苦悩問題がクローズアップされてきたために、この記事は少しは改善されてきたのかと期待を抱かせた。
☆しかし、そう簡単ではないだろう。W杯代表に選ばれた選手はたしかに自分の努力で栄光と高待遇を手に入れたのだから、それはそれでよいが、まだまだ葛藤は終わってはいないだろう。
☆とはいえ、日本に比べ、はるかに移民政策は進んでいる。移民がEUの中でドイツを選ぶには、高収入が得られるようにしなければならないし、貧困な生活を強いられる移民に対しては社会保障を充実しなければならない。そのために法整備と規制緩和をしてきていると聞く。
☆ミュンヘン大学のエドガー・グランデ教授も、2008年段階で、リチャード・フロリダの3Tを引用し、クリエイティブ・クラスを移民にも適応していくルールや道徳を広めることを主張している。
☆様々な問題は解決されていないだろうが、東西ドイツ統一と移民政策への挑戦には、日本は学ぶ必要があるだろう。M世代の活躍というフレーズが出てくることは光と影の両方があるだろうが、世代間格差で悩む日本とはまた違い、日常生活でグローバリゼーションに直面していることが十分に伝わってくるではないか。
☆留学生や移民をどのように寛容に受け入れるのか。これが日本の2012年問題の1つになることは否定できないだろう。
☆W杯は、もはやナショナリズムの発揚などではなく、多様性と各国のアイデンティティの統合に向かっているのかもしれない。グランデ教授の言う「コスモポリティズムの第二のルネサンス」ということか。サンデル教授のアリストテレス的正義の復権ということにもつながる。
☆この手の話は、帰国生(高校生)には通じるというか、彼らはこの手の議論は当たり前だと思っている。2012年対応にとって、帰国生や留学生の役割は大きなものになるだろう。私立中高一貫校で、帰国生入試が重要になっているのは、目先の東大・早慶上智の合格実績を稼ぐということなどではない。もちろん、それも現実的に必要であるが、日本政府がコスモポリティズムの第二のルネサンス開国に躊躇している間に、教育レベルで浸透させてしまえるからである。
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