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2012年の変化にいかに対応するか⑧

2012年の変化にいかに対応するか⑦のつづき。

ティム・ブラウン(IDEOのCEO)の「デザイン思考が世界を変える」は、2012年対応を考える上で役にたつ。すでにダニエル・ピンクがデザインの時代だという趣旨のベストセラー本を出版しているから、コンセプトは似ているのだが、ダニエル・ピンクの本はどちらかというとハウツーより。ティム・ブラウンの本はデザイン思考そのもののアイデアについて書いてある。

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☆気になる箇所を引用しよう。

デザイン思考では、誰もが持っているものの、従来の問題解決方法では軽視されてきた能力を利用する。デザイン思考は、人間中心であるというだけでなく、人間の本質そのものともいえる。

☆これは非常に重要なメッセージであるが、この段階では具体的にはよくわからない。「人間中心であるということ」と「人間の本質そのもの」との差異は何か?本書を読み進めるうちに、読む側が自分で発想せざるを得ないようだが、「人間の本質そのもの」の部分を考えなくても東大i.schoolのようにデザイン思考を活用することができる。

☆しかし、2012年対応には、この部分を考え続けて行くことが大事なような気がする。ともあれ、続きを引用しよう。

直感で判断する能力。パターンを見分ける能力。機能性だけではなく感情的な価値をも持つアイデアを生みだす能力。単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力。それを重視するのがデザイン思考だ。感覚、直感、インスピレーションに頼ってビジネスを営もうと思う人などいないだろうが、論理や分析に依存し過ぎるのも、それと同じくらい危険だ。そこでデザイン・プロセスの根幹をなすデザイン思考の一体的なアプローチでは、「第三の方法」を提唱している。

☆どの部分が「人間中心であるということ」を指しているのか、「人間の本質そのもの」を指しているのか、わからない。しかし、結論を急いではいけない。ティム・ブラウン自身こう語っている。

私はインダストリアル・デザイナーになるための教育を受けたが、「デザイナーである」ことと「デザイナーのごとく思考する」ことの違いを理解する」ことの違いを理解するまで、ずいぶんと年月を要した。・・・・・・ようやく私はクライアントの技術部門とマーケティングの上層部をつなぐ鎖の輪以上の役割を果たしていることに、少し気づきはじめた。

☆、「デザイナーである」ことと「デザイナーのごとく思考する」ことの違いとは何であるか?「クライアントの技術部門」と「マーケティングの上層部」とそれらを「つなぐ鎖の輪」と、「それ以上の役割を果た」すこと(後に続く箇所で「車輪のハブ」と言い換えている)の違いは何か?これらのことに気づかなければ、「人間中心であるということ」と「人間の本質そのもの」の差異はわからないということだろう。

☆いずれにしても、教育において、教師は「デザイナー」であることより「デザイナーのごとく思考する」ことが重要になってくるだろうし、それは広報活動でも同じことが言えるだろう。そして、組織運営においても同様だ。

☆学習プログラムをデザインするときも同様だ。あらゆる局面でデザイン思考が必要になってくる。

☆しかし、これはいかなることなのだろうか?大量消費、大量生産、大量移動のポストモダン社会で生きることは、人間の分裂的生き方を促すことであるが、それが壁にぶつかっているのは、歴史経験として理解できる。

☆だから、顧客満足などという消費者中心と人間中心とはおそらく違う捉え方なのだろう。デザイン思考は、やはりマーケティングにおいて革命的なのかもしれない。こういう箇所がある。

デザイン思考を利用して、参加型の新たな社会契約を確立すべきだということだ。「買手市場」や「売手市場」といった対立的な言葉で考えるのはもはや不可能だ。われわれは、ひとつの世界に生きているからだ。

☆デザイン思考に「社会契約」だとか「ひとつの世界」を持ち出してきているのが大いに気になるが、ともあれ、アップル社、マイクロソフト、P&Gなどをはじめとするプロジェクトを数千行ってきたIDEO社のデザイン思考は2012年対応のヒントになることは確かだろう。

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