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2012年の変化にいかに対応するか⑦

2012年の変化にいかに対応するか⑥のつづき。

☆日経ビジネスon LINE(2010年7月5日)にも興味深い記事が載っている。

国内外の製薬大手を襲う「2010年問題」。各社の主力薬の特許が2010年前後に相次いで失効し、直後から後発医薬品にシェアを奪われて収益が著しく減少する事態を指す。その衝撃の大きさに医療産業が揺れている。この問題は、ほかの産業にとって他人事ではない。2010年問題の本質は、安価な類似品の登場による値崩れ、技術革新に伴う従来技術の陳腐化といった、どの産業にも起こり得るパラダイムシフトであるからだ。

☆この問題を乗り越えるために何をするか、ビッグファーマーの武田薬品工業の長谷川閑史社長が語っている。まずは、問題意識。

かつての高度成長期のように、新製品が次々と出てきて右肩上がりに成長している時には、日本人だけでも構わなかった。お互いに競い合って切磋琢磨しますから。ところが、調子がおかしくなると途端に裏目に出る。「新薬の候補を出せないのはうちだけではない。ほかも出ていないから、仕方がない」と、結果を出せないことを正当化してしまうのです。こうした風潮が蔓延すると、一念発起して悪い流れを変えようという動きも出てこなくなります。

武田は、2010年3月期に減収となるまで18年間にわたって増収を記録してきました。これだけ長く成長を続けると、多くは「来年は今年よりも良いはずだ」と、根拠のない楽観に陥ってしまうものです。私の力不足の面もあったかもしれませんが、経営トップがいくら警鐘を鳴らしても、実感がわかない。危機が目前に現れるまでは、本当の危機感を持てなかったのです。

☆ここには、ガラパゴス化日本社会全般と共通した問題が横たわっている。それゆえ、長谷川社長がそれを乗り越えようとするアイデアは、横断的に活用できるかもしれない。長谷川社長は、日本流を完全に払拭し、完全復活を目論む。その基本骨子は次の4つ。

①外国人幹部を積極登用

②総合職の一括採用廃止

③研究開発拠点を米国に移転

④女性管理職の登用に数値目標を設定

☆社員の多様性が重要で、そのために社員の多国籍化、ジェンダー問題の克服、採用の柔軟性、そして研究の多様性。ともかくあらゆる局面での多様性に焦点をあてようということだろう。

☆ガンやアルツハイマーの病を治療する薬品は、分子標的薬にシフトしている。これは病気の現象全般に効く薬という発想から治療すべき細胞をターゲットするわけだから、治療薬の多様化が起こっているわけだ。

☆このことは、教育においても同じようなことがいえる。順天の長塚校長も、とにかく生徒1人ひとりの多様性に応えられる教育をしないでどうして個性を大切にするなどということが言えようかと。その多様性を大事にし個性を引き出せる教育のために世界標準の環境が必要だとも。長谷川社長と同じ考えを、すでに10年以上前から実践している。

☆いずれにしても、この医療の2010年問題は、2012年にはピークを迎える。米国ではオバマ政権が二期目をつかめるかどうか。それは米国の医療保険制度の問題もカギを握っていると言われている。分子標的薬の新薬開発の成功がポイントになるが、そうなると日本はどうなるのか?長谷川社長はそれを想定して、研究開発拠点を米国シカゴに移転するのだろう。

☆医療・薬学分野でパラダイム・シフトが起こることは確かだろうが、何が起こるのだろう。医学部に進学させることだけ考えていたのでは、とんでもないことになる可能性もある。この分野の情報を収集することも大事かもしれない。ともあれ、進路先指導だけでは2012年対応はできないことは確かではないだろうか。

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