2012年対応の1つ ユヌス氏と対話する中学生
☆今月、ムハマド・ユヌス氏が日本の中学3年生30名と対話するという。ユヌス氏は、あまりにも有名だが、マイクロファイナンスの時代を拓いて、2006年にノーベル平和賞を受賞した社会企業家。
☆仕掛け人は、どうやらまたもやベネッセのようだ。同社は、2007年より、日本の各企業や大学と協働しながら、日本の中・高校生に、市場原理至上主義的教育観とは違う学びのプログラムの研究と開発への取り組みを行ってきた。「ロボットを作ろう、動かそう」などのプログラムをマイクロソフト株式会社と協力して造ってきた。
☆そして今回、その一環として、ムハマド・ユヌス氏と中学3年生30名が対話する特別講座を実施するということのようだ。
☆「その一環として」とは、何を指しているのか?たしかに理数系人材育成の促進を目指ししてきたその一環という意味もあるだろうが、ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞した2006年の次の年から動き出しているのだから、それだけではあるまい。
☆とくにマイクロソフトと協働しているのだ。ピンとこないわけにはいかない。ビル・ゲイツ自身、チャータースクールを支援し、プロジェクト・ベース学習を応援している。その応援の仕方は、ユヌス氏と共通する社会起業というかベンチャー・フィランソロフィー的な発想から生まれている。
☆どこまでベネッセが考えているか測り知れない深さがそこにはあるが、ともあれ社会貢献しながら利益はきちんと得る社会起業的な動きを模索しているのは教育産業としてのミッションなのかもしれない。もちろん、今すぐにそうだとは言い切れない。
☆しかし、芸術にそしてこのようなソーシャル・キャピタルのシステムに投資をしているというのは、市場原理至上主義とは一線を画そうという流れだろう。ただし、間違ってはならないのは、社会起業は資本主義を否定していないどころか、その闇の部分を一掃し、光の資本主義を促進しようという試みであることを忘れてはならない。
☆ユヌス氏が総裁であるグラミン銀行の在り方は、ビル・クリントンも絶賛した。だから、光の資本主義を支える1つの方法論は、「第三の道」路線である。これはもしかしたら、Kan Do民主党路線とも共鳴するのかもしれない。ビル・ゲイツのクリエイティブ資本主義も1つの方法論である。そして言うまでもなくユヌス氏のマイクロファイナンスもそうである。
☆第三の道は、社会政策的に乗り切ろうとするから、なかなかうまくいかないだろう。クリエイティブ資本主義は、クリエイティブクラスにとっては、光の資本主義である。クリエーターたちは、自ら資本を得、生産手段も自ら所有する。しかし、経済格差を埋める方法は寄付ということだ。貧困層に資本と生産手段を渡すわけではない。
☆ところが、ユヌス氏のマイクロクレジットは、資本と生産手段を、貧困層に貸し出すのである。そして貧困層の中にクリエイティブクラスを見出そうとするのである。
☆しかし、マザー・テレサとは全く違う。マザーにとって、生産手段も資本も不要。それで人間は幸せになれるという価値観は、光の資本主義では届かない。2012年の変化は、その両極の間で揺れ動くだろう。
☆そのような理性への不安をベネッセは引き起こそうとしているのだろうか。ともあれ、ロボット講座などに参加している高校から、当然ユヌス氏との対話に参加するだろうから、たとえば、麻布学園、聖光学院、鴎友学園女子、西武学園文理、都立小石川中等教育学校などの生徒たちが挑むことになるのだろう。
☆ユヌス氏との対話が、世界を変える中学生という波動を生み出すことになればと期待している。
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