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東大で「ハーバード白熱教室 in Japan」

☆東大のホームページによると、8月25日、安田講堂で、ハーバード大学のサンデル教授の講義が行われるという。趣旨は、同ホームページにこうある。

  東京大学大学総合教育研究センターでは、NHK番組「ハーバード白熱教室」でおなじみのマイケル・サンデル教授をお招きし、本年8月に本郷キャンパス・安田講堂にて、特別講義「ハーバード白熱教室 in JAPAN」を開講致します。この講義は「ハーバード白熱教室」のスタイルと同じく、受講者との対話形式を取りながら現代社会の「正義」を探求する講義となる予定です。
 先に掲げられた東京大学行動シナリオでは、世界最高水準の豊かな教養と深い専門性を保持し、国際的な視野にたつことのできる人材を育成することがめざされています。このたびのサンデル教授の講演会は、学生が多様な価値観を意識したコミュニケーション力を獲得することに資するものと思われます。
 また、サンデル教授の、学習者との対話やコミュニケーションを重視した授業スタイルは、本学の教職員の方々にとっても、示唆にとむものと思われ、本学の教育力のさらなる向上に資するものと思われます。

☆キーフレーズを拾うと

対話形式を取りながらの講義

世界最高水準の豊かな教養と深い専門性の保持

国際的視野にたてる人材育成

多様な価値観を意識したコミュニケーション力

学習者との対話やコミュニケーションを重視した授業スタイルは東大の教育力に資する

☆大学の広報だから、価値中立的なトーンで、これから大事だと広く認知されている項目を盛り込んでいるだけだが、それでも、教育力のパラダイムシフトを本格化したいという意図は読みとれる。

☆また、サンデル教授は、市場と正義の関係について造詣が深く、そのベースになる思想をアリストテレスにおいているから、これはある意味ソーシアルビジネスの方向性をサポートするイベントにもつながるか。

☆アリストテレスの政治学や倫理学は、欧米の経済学の基本的な考え方に受けつがれていて、アマルティア・センなどはアリストテレスの系譜にあるといってもよいかもしれない。

☆アリストテレスの正義に関する考え方は、交換の正義と配分の正義のシステム調和にあるが、近代経済学は、この配分の正義を考えなくなり、交換の正義、つまり交換だけの理論がメインストリームになってしまった。極端には市場原理至上主義になってしまったわけだが、そこに配分という公平性の考え方を復権させようという動きは常にあったわけだ。

☆アメリカの場合、ざっくり言うと、共和党は前者だし、民主党は後者。しかし、基本「自由」の優位性は守らねば民主主義ではないから、そうは割り切れないのが実情。

☆特にWebの世界が到来してからは、ファイナンスのお金の動きのインサイダーよりも情報のインサイダーによる資本家の欲望操作が行われるから、具体的な経済や商業ルールでは歯止めがかからない。

☆そこで、人材そのものが共同体主義をリスペクトするように育たなければならない。というわけで、サンデル教授の登場。つまり、アリストテレス的古典自由主義の復権ということ。おそらくこの発想は≪私学の系譜≫だろうが、共同体を官僚制体制と読み替えれば≪官学の系譜≫に転換してしまう。両刃の刃ということか・・・。

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