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土浦日本大学中等教育学校 自分の壁を乗り越える教育

土浦日本大学中等教育学校の校長中川弘先生にお会いした。2003年に中学を開設して以来、すでに2期生までが、卒業しているが、その成果には目を見張るものがある。東大や医学部をはじめ、海外大学まで、生徒1人のひとりの自己実現が成就している。

☆このように、6年間で生徒1人ひとりのタレントを引き出し、トレーニングし、具体化するには、どのような仕掛けや秘密があるのだろう。

☆東大を頂点とする大学のあり方に変化が表れている。もはや東大ピラミッド位階秩序にこだわっていたのでは、日本はおかしくなる。そのことを一番痛感しているも実は東大で、他の大学にももっとがんばってもらわなければならないが、「それにはどの大学にも世界やものを変える力をもったリーダーが入学していかねばならない」と、中川校長は語られる。

☆それにしても世界やものを変える人間力をどのように育成するのだろうか。それは、リサーチプログラムや実験、海外の研修プログラム、長期留学のチャンスなど、クロスカリキュラムをベースにした学際知を育てるプログラムが充実しているからのようだ。

☆また、英米圏以外の多様な異文化を背景に持っている多くのネイティブスピーカーの存在も大きいという。

☆しかし、何よりも重要なことは、世界やものを変える前に、自分の壁に気づき、それを乗り越えるチャンスが意識的に巧まれていることだという。さまざまな体験型のプログラムもそのような刺激を与える大きな機会であるが、中1の段階で、中川校長が年に15回ぐらいの独自の道徳の授業を行っていることが大事なのである。

☆この授業は、毎回校長先生が用意した知のトリガーになる英語のフレーズを考えるところから始まる。世界観に気づくトレーニングからスタートするわけである。その次には、谷川俊太郎や新渡戸稲造などの素材を通して、心の奥深い洞窟を歩み、世界の架け橋になる高邁な精神や勇猛な気概について、生徒1人ひとりが想いをめぐらし、気づいたことを書く時間が設定されている。そして、その生徒たちの気づきの文章1つひとつに、中川校長はメッセージを書き刻む。

☆この道徳の授業のノートは、生徒1人ひとりのかけがえのない自己発見の軌跡であると同時に、何より校長先生との対話の痕跡なのである。この中1からの雄大な考える時間こそ、多角的で柔軟なものの見方を生み出す精神の土壌なのではないか。

☆そして、この精神が生徒の内側から豊かになることによって、生徒たちの姿が美しくなるのだと中川校長は語る。その姿こそ、志の高い心を学内に浸透させる重要な教育の成果であるとも。

☆極めてシンプルな教育のプリンシプルであるが、そのプリンシプルの生成される過程は、たいへん複雑だし、先生方の創意工夫と生徒との多重な対話が織り込まれている。

☆この教育の生成の過程を観察することで、土浦日本大学中等教育学校の教育の奥義を部分的かもしれないが、知ることができるのではないだろうか。

☆この奥義を本ブログなどで少しずつ明らかにしていくことができたならば、世界やものを変える同校の教育が社会に与える良質の影響に微力ながら寄与できるのではあるまいか。

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