未来の学びプロジェクト
☆ここのところ2012年対応をうだうだ考えながら、学校の先生方と未来の学びや学校について話をしていると、未来はそう遠くないところでやってくるなと感じる。2012年に間に合うか間に合わないかはまだ判断がつかないが・・・。
☆帰国生入試を本格的に考え始めている私立中高一貫校が増えているという話もしてきたわけだが、これは1つの未来の学びのプロジェクトであると思っている。
☆この予感は、そのような流れをリサーチするために、実際に私も高校3年生を中心とする帰国生20数名の小論文のサポートを協力させてもらっている体験の中から生まれている。
☆添削や過去の問題をトレーニングする講師は別にいて、テクニカルな面はわたしはサポートしていない。それでは、どこをサポートするかというと、プロセスフォリオの部分。テクニカルなサポートは、次々と自分の考えが形になり、それが添削され、もう一度書き直して作品ができあがる。完成品をファイルしておけば、ポートフォリオだ。
☆プロセスフォリオとは、その自分の考えが形になる前の判断がいかにしてきまったかとか、形になるまでの過程はどうだったかとか、書き直していく過程はどうだったかというプロセスのポートフォリオをつくるもので、生徒自身が、自分の思考のジャンプや表現のマネジメント、表現の戦略をたてる過程そのものである。
☆だから、サポーターとしては、教えることはしない。情報提供だけする。生徒は情報を要約し、そのうえで批判をして小論文を書いていくのだが、このとき批判視点を教えなくとも自然に気付くようにする仕掛けが座標マップである。
☆まず、要約をパラグラフライティングの手法で徹底的にトレーニング(記事を読む時間を測ったり、パラグラフごとの字数を数えたり、一文の長さを数えたりするところから始める。その意味が何かは、書くときに気づく)する。そして常にそれは記者の立場であることを確認。誰にとっての立場で書かれているかの確認が非常に重要である。
☆もちろん個人としての記者の立場ではなく、メディアとしての立場である。同じ事件でもメディアによって記事内容が大きく異なる場合は、その両方を使えば座標系マップは不要なのだが、どうも最近は大きな枠組みは同じである。
☆だから座標系マップをあてて、異なる視点があるのかどうか考える時間を設定するのである。そしてプレゼンやペアで議論する時間をとる。おのずとすてきな座標系マップができる。
☆それができると、自分の立場をその座標系マップに書き込む。すると、自ずと批判的視点が生まれてくる。
☆しかし、この前にあるいは同時並行的に進めなければならないのが、ハーバード大学のサンデル教授の正義論の座標系マップと5人の経済学者の座標系マップの作成である。座標系マップの構築過程は、今述べた通りである。これによって自分独自の選択判断のモノサシができあがる。
☆難解な哲学書を読まなくても、独自のそれでいて世界標準の政治経済哲学の思考エンジンができあがる。もちろん一足飛びではできないが、だいたい2回×80分で1サイクル。
☆手を変え品を変え、3サイクルぐらいやれば、思考エンジンは動きだす。
☆このエンジンさえできあがれば、あとは車体のデザイン。それはテーマによってさまざまだが、批判的視点と解決判断は基本は同じである。
☆この思考エンジンこそ、タレントとトレランスの形であり、パラグラフライティングと表現のマネジメントとレトリック戦略がテクノロジーである。
☆かくして21世紀型クリエイティブ・クラスの基礎(3T:タレント・テクノロジー・トレランス)ができあがる。
☆そうそう大事なことは、これができるのは、帰国生は、多様な国の文化を体験してきた文化資本を身につけているからである。同じ立場でいくらプレゼンしたり議論したりしても、座標系マップはうまくできないのだ。
☆同質文化にいると、座標系マップの座標軸の違いがでてこない。だから、軸を自ら決めるという学びができない。決められた軸に立場を書き込むだけである。それはそれで考える力はつくが、自律もできないし、正義の判断もできるようにならない。
☆帰国生や留学生が、知のシナジーを生み出すということを、帰国生入試を行う学校は気づいているのである。だから帰国生の大学実績はよいのであるが、それはこのシナジーの結果の1つに過ぎない。
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