東京私立中高協会 選抜実施要領発表
☆今月、一般財団法人東京私立中学高等学校協会は、「平成23年度 東京私立中学・高等学校入学者選抜実施要領」を申し合わせた。
☆本実施要領では、出願期日、選抜期日、選抜方法など協会に参加している私立中高の紳士協定の枠組みが盛り込まれている。東京の場合すべての私立中高が参加しているため、東京では、原則この枠組みの中で、私立学校の教育の質の競争が行われることになる。
☆このように協会の話し合いのもとで、私立学校が教育の質を競争的に共在する関係を私学市場と筆者は呼び、塾という企業が私立中高や大学の合格の数を競い合っているマーケットのことを受験市場と呼んでいる。
☆このように分けて考えなければならないのは、合格一路の受験勉強と人間全体の成長力を育成する教育との差異が、社会全体で理解できなくなっている現象がおきているからであり、時代の要請である。
☆たとえば、これは極端なたとえだが、こういう塾が現れたとしたらどうだろう?つまり、これから多様な価値観に基づき、多様な学校選択をしようとする多くの受験生に、その塾の1つの価値観を押し付けようとするところが現れたらどうだろう?逆に学校であるにもかかわらず、予備校と変わらない受験勉強がメインのカリキュラムになっているところが現れたらどうだろう?
☆もしも出現したならば、多様な価値観の中から、子どもたちが自由にそれぞれ選択判断をすることが求められているグローバルな世界の動きに反するのではないだろうか?世界の中では、教育とは受験勉強ではない。世界の痛みを解決するために、アイデアを出し合ったり、知の構造化を学際的に進めていったり、共に生きるプログラムをデザインしたりしていくことが目的になるのに、日本の子どもたちは立ち遅れてしまうのではないだろうか?
☆上記の例は確かに極端かもしれないが、進学重点校とか国公立大学に全員合格させますという宣言をするような学校が実際にあるのは、当たらずといえども遠からずではないだろうか。
☆そこで、受験市場は受験市場の役割を果たし、私学市場は私学のミッションを果たせるように応援するのが、私立学校の受験からかかわる広い意味でのステークホルダー全員の役目なのではないだろうか。
☆受験市場といえども、市場である限り、CSRは遵守することは大事であろう。たしかにこの市場が冷え込むことは、日本の教育行政の特殊な事情と世界の教育事情を比較すれば、日本の未来に不安をもたらすであろう。
☆その一点で、受験市場と私学市場は共に生きることができるかもしれないが、受験市場はともすれば、偏差値という1つの指標で私学の多様性を切り捨てる結果を導く両刃の剣であることに変わりはない。
☆したがって、東京私立中高協会は、すべての私立学校の建学の精神に基づく多様態を保守するために、多様性を阻害する要因に対しては厳しく闘う姿勢(=時代の要請)を見せてきたし、これからもそうである。
☆ところが、受験市場と私学市場の差異を明確に意識しておかないと、私学の中からときどき間違って、受験市場の意図(受験市場のニーズ)に対応する動きがみられる。つまり、受験市場のニーズと時代の要請の違いを取り違える学校が現れる。
☆そういう時は、相互に話し合って、≪私学の系譜≫として受験のニーズ(消費者の欲望、企業のエゴ)を考慮しながらも、時代の要請(子どもの成長にとって最適な環境をつくる)を選択できる教育市場を創出し続けることを確認するのである。
☆今回の選抜実施要領の中にも、私立中学校の選抜に関して「推薦入試」は行わない旨が確認されている。また、いわゆる「出張入試」については、他県及び他校との関係に配慮して自粛するものとすることが確認されている。
☆選抜の公平性、信頼性、妥当性を最適化するにはどうするかという点と子どもたちの学びの質と知の質を選抜段階で保守しようというルールの確認だと思う。これによって、私立学校の教育の多様性、先見性、先進性、社会的責任性が持続可能になり、日本の子どもたちの未来を保守することになるのである。
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