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私立学校のほんとうの思考力の鍛え方

☆今年3月、<思考力の鍛え方 学校図書館とつくる新しい「ことば」の授業>桑田てるみ・編著(静岡学術出版2010年3月)というすてきな本が出版された。

Sikoryoku

☆大学の研究者である桑田てるみ氏とともに研究した私立中高の先生方が、実践的な研究成果を理論的かつ実用的に、その成果を可視化した書籍。

☆学校関係者のみならず、受験生も保護者も、一般の方々も、読むとはどういうことか、書くとはどういうことか、考えるとはとはどういうことなのか、明確な輪郭を理解することができ、必見ではないだろうか。

☆そして、参加されている教師の所属している学校を見れば、なるほどこのような教師がいる私立学校は良質教育を遂行しているというのがすぐにもわかる。学校選択の判断の感覚を磨くにも良書である。

☆その私学とは、

かえつ有明

カリタス女子

慶應普通部

田園調布学園

☆いずれの学校もクオリティの高い教育を実践している学校であることはわかるのだが、本書を読めば、なるほどこのような思考力ベースの言語教育を行っているのかということが、さらにわかる。

☆特に、本書の教育実践の内容を丸ごとプログラム化したかえつ有明の独自の取り組みである「サイエンス科」は、実は広く深い米国のプラグマティズムと認知心理学、図書館の情報処理学などの見識を実現した高度な創造物であることが改めてわかったのは、筆者としては大収穫であった。

☆本書全体を貫いているビジョンは、PISAやその最前線の成果を生かそうと試みる学習指導要領の背景にある世界標準の知を教室にということであるが、本書を読み進めていくと、そのようなテクニカルな問題よりも、もっと根本的でファンダメンタルなところから思考力の鍛錬の必要性が生まれていることがわかる。

☆つまり、PISAや学習指導要領は、今日的な市場経済のニーズにどう応えるかという政策的側面が前面にでてくるのに対し、私立中高の先生方の必要性のアンテナは、時代の要請そのものから子どもたちに迫る危機をキャッチしているという違いがあるのがわかる。

☆教室から子どもたちが世界の痛みや問題をキャッチし、解決するために思考することに集中する風を生み出そうという教師のこころの響きが伝わってくる。

☆そしてそれが民主主義の持続可能性を作りだすという理論。民主主義と教育はつながっているという、なんというJ.デューイ的な系譜が流れ込んでいるのだろう。

☆そう感じて、愕然とするのは、宮台真司氏が言うまでもなく「民主主義は一度もなかった国・日本」の教育政策で、本書のような「思考力」の教育はいかにして可能なのだろうか?

☆本書にかかわった教師の所属する学校が、すべて私立学校だったということが、意味するのは、このような「思考力」の育成は、私立学校でしかできない・・・。つまり希望の光は、私立学校にあるというメタファーであるのかもしれない。

☆少し大げさ・・・。しかし、改めて本書を執筆している先生方の所属している私立学校の図書館を思い出してみると、確かに私立学校の中でも抜きんでた特色のあるところばかりである。

☆その図書館に足を踏み入れただけで、本を読み、考え、何かアウトプットしたくなる知の空間であることは間違いない。

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