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第1回男女別学教育シンポジウム開催される

☆昨日10日、アルカディア私学会館(市ヶ谷)で、「第1回男女別学教育シンポジウム」が開催された。会場は、定員160名を超える大盛況の雰囲気の中、あっという間の3時間だった。

☆前回本ブログで、こう書いた。

私立中高一貫校の合同イベントも、ますます本質的な問題を議論する場になっているのも、大学合格実績や偏差値という現象面に本質的な質感を突き刺そうというチャレンジなのかもしれない。

☆今回のシンポジウムも、この路線。

☆「なぜ男女別学教育は子どもを伸ばすのか」(学研新書)の著者でもある中井俊己氏による基調講演では、男女別学教育の希少性と優位性の裏付けが、丁寧に整理された。今まで、それぞれの学校の説明会などで語られ議論されてきた「今なぜ男子教育か、女子教育か」についての論点が、完全に網羅されていた。脳科学による成果やデータ的な根拠も示され、全貌が明らかになった。

☆シンポジウムに参加していた共立女子の渡辺校長は、「自分たちが考えてきたことが、これだけの男女別学教育の実践者が一堂に会したところで、やはりそうだったと確認でき共有できたことは、何よりの成果ではないだろうか」と、このような機会をもっと作る必要があると改めて確信したという。

☆たしかに、全国の私立中高一貫校に通学している生徒数は、同世代人口の7%ぐらい。私立中高一貫校に対するアテンションすらそれほどのものではない。圧倒的に公立学校の学園生活が日常なのである。

☆そして、男女別学教育の私立中高一貫校に通学する生徒となるとさらに占有率は下がる。つまり、日本の中等教育レベルで、99%の生徒にとって、共学校が一般的な学園シーンなのである。

☆この多数の先入観をぶち破る働きかけは、テクニカル層とファンダメンタル層の両方でアテンションをあげなければならないだろう。

☆だから、中井氏は世界でも、男女別学教育は、学力のスコアが非常に高いというケースを実証的に示す。そして、東大合格者数トップ10のうち90%が男女別学教育校であることを示すのも忘れない。

☆もちろん、そのようなテクニカルな面での話が本意ではない。ファンダメンタル層の重要性に気づくきっかけとして活用しているだけである。

☆そのファンダメンタル層の豊かだが少し哲学的で、一般ウケしない話は、パネリストである男女別学教育の実践者である校長先生方が大いに語り尽くした。

☆それにしても、「共学校はジェンダー固定を強化する可能性が高いが、男女別学教育はジェンダー固定を打ち破る可能性が高い」という言説には、何か本質的で革命的な重みがある。

☆コーディネータの東京女子学園校長の實吉先生は、「共学校の価値を認めていないというわけではないので、誤解をしないように」とすかさずフォローをいれていたが、それほど共学校が当たり前になっていて、クリティカルシンキングができない状態であることをアイロニカルに語ったともとれないことはない。

☆日本の教育には多様性や批判的思考力がないのだろうか。。。それはともかく、男子教育の現代化、女子教育の現代化を試行錯誤し模索してきたパネリストだけあって、非常に言葉が繊細だった。取捨選択が実に巧妙であった。

☆パネラーの松下先生(京華学園前校長)が、リーダーシップとフォロワーシップの人間関係力が豊かに育つのが男女別学教育の特色の1つでもあると語ったが、そのときに女房役とか良妻賢母という言葉で語ることはなかった。

☆男女の権力関係をイメージさせる言葉は使わないのである。価値中立で世界標準の言葉を選択して使っているところが、実にリフレクティブで、気づきの多いシンポジウムだったと思う。

☆それにしても、ファンダメンタルな話に耳を傾けられない日本。それは教育の成果の一つであるが、クリティカルでクリエイティブな対話がトレーニングされていないことの証しである。男女別学教育の希少性は、まさにこの大切なものを見えなくしている教育に風穴をあけることができる希望だということだろう。

☆この希望という時代の要請を引き受ける共学校の出現にエールを贈ったシンポジウムでもあったのかもしれない。

☆このシンポジウムの仕掛け人でもある清水先生(鴎友学園女子前校長)が、男女別学教育が、歴史性と世界性という時代の要請を引き受けるミッションを抱いていることを高らかに謳い、シンポジウムは閉幕した。

参照)本ブログ「男女別学教育の存在意義の今」

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