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私立中高一貫校の世界的視野

☆「私立中高の育成するグローバル人材でご紹介したが、近藤先生と吉田先生からお話を伺っているとき、もう1つ感じたことがある。

☆それはグローバル人材の育成を考えるときに、私立学校の場合は、内側の都合から考えているわけではないということである。

☆経産省など官僚が考える場合は、当然日本の利益である。それも経済的利益に限られる。テクニカル層の話であって、人間の根源的な存在にかかわるファンダメンタル層ではない。

☆公立学校も日本の利益が優先する教育行政や教育政策の指針に従わざるを得ない。しかし、ちょっと考えてみれば、教育の立場から考えれば、世界の人々すべての人生の利益を考えるのが当然なのである。

☆だから、近藤先生や吉田先生と話していると、たとえばアメリカのプレップスクールと私立中高一貫校の比較研究の話題になるのだ。

☆もちろん、欧米のエスタブリッシュな私立学校やエリート公立学校が、絶対的な普遍的理念で成り立っているかというと、ローカル普遍の場合もある。しかし、重要なのは、ローカルな普遍性を省察し、常に普遍性のメンテを怠らないことである。

☆そしてその見識を教養と呼んでいるのだろう。

☆ところが、日本の場合、かつての教養主義時代でも、その理念の未規定性に気づかずに、ガラパゴス的なビジョンを驀進していた可能性がある。宮台真司氏もその点をいつも指摘している。

☆さて、その理念やビジョンの開かれた未規定性について、知るにはどうしたらよいのか。それは多様性の環境の中で、スーパーフラットな(アートの感覚がわからなければならないのがスーパーフラットの条件ではある)対話をし続けるしかない。

☆前回ご紹介した鈴木寛氏のプランである「熟議が日本の教育を変える」路線の対話もその一つではある。しかし、多様性とはプラグマティックには、異文化を身体化している人間どうしの対話である必要もある。

☆私立中高一貫校という中等教育レベルが、ユヌス氏の言う意味で、クリエイティビティを養うチャンスであることも、テクニカル層におけるリーダーではなく、ファンダメンタル層におけるグローバル人材を輩出する重要な拠点である理由の一つのであるが、何より重要なのは、異文化を身体化している多様な人材との対話が、日常生活の中で当たり前のようにできる環境を有していることが、最大の理由ではなかろうか。

☆一般財団法人東京私立中高協会は、「東京私立中高一貫校の教育力と存在意義~偉大な可能性を秘めた私立一貫教育」という冊子を公開している。そこでは私学の潜在的能力を5つのキーワードで語っている。

先進性

多様性

柔軟性

社会性

責任感

☆このキーワードをきっかけに、深くそれぞれの潜在的能力を表現している。すでに5月の国際フォーラムの東京私立中高一貫校の説明会イベントで配布されているので、見直してみてはいかがだろうか。

☆そしてこのキーワードは、ケイトスクールなど全米でもかなり卓越したプレップスクールでも重要な柱になっているのである。

☆日本の公立学校においてはどうだろう。多くの人はあると回答するだろう。しかし、現実はないのである。それが東大教授の佐藤学氏が語るポストモダニズム教育の影の部分である。そのことについて、現代思想の旗手たちと東大教育学部はどのように決着をつけるのだろうか。

☆ポストモダンの真骨頂は、大きな理念や物語は失われ、身近な自分の興味と関心に執着する個性が大量消費・大量生産・大量移動のテクニカル層で自由を楽しむことである。しかしながら、それはネット社会の環境統治型のフラットという名のコントロールに左右されていることにコントロールする側もされる側も気づかないでいる。

☆そこに気づくには、スーパーフラットでファインアート的感覚知が必要である。それが新しい教養の時代になるかもしれない。デザイン思考の重要性が最近話題になるのもその兆しかもしれない。よいとかわるいとか、そういうことではなく、欧米の教育の対話というのは、日本の生活の中では、体験できないほど量も質もすごいのであるが、そこは経験してみないと実感をいだけない。

☆この経験値を積まない限り、日本の教育は変わらないというのが本当のところだと思う。そんなことはない、論理的に対応できるのだと官僚知は言うのだろう。東大に行けば解決すると。しかし、その東大ももはやそれでは対応できないことは百も承知のはずだが、専門家的議論以外に、シチズンシップの議論をスルーしてきたがゆえに、せっかくの海外の留学経験が生きないのである。もったいない・・・。

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