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かえつ有明の世界標準の教育環境

☆昨日、イギリス視察から帰国したかえつ有明の石川教頭にお会いした。嘉悦大学は、ケンブリッジのニューホールカレッジ内に教育文化センターを持っている。その関係で、ケンブリッジと連携して行っているサイエンスプログラムなどを視察してきたということのようだ。

☆そして、石川教頭はこう確信したという。

世界のプログラムは、プロジェクト・ベース型の学びが当たり前になっていますね。フィールドワーク、探究、議論、発表が有機的につながっているプログラムの運動体が教育に根付いているわけです。チームにおけるチューターの役割も非常に重要。本校がサイエンス科を拠点に、体験型探究学習を実施したり、クリティカルシンキングを育成したりして、そのエッセンスを各教科の授業とシェアしてきたのは正しかったと改めて確認できましたよ。

☆特に教師がチュータと協力して教育の環境をシステマチックに生成してきたことは、世界標準の教育環境であると確かな手ごたえを感じたということのようである。

☆チューターというと、世界標準の教育環境という意味合いがわからない場合は、お手伝いをする人というイメージだと思う。

☆しかし、かえつの場合はそうではない。チューターというのは、ちょっとしたキーワードを投げかけたり、ちょっとしたメディアを活用したりすることで、生徒達がアハ体験できる役割を担っているのである。直接解き方や正解を教えるのではないのだ。生徒達が、あっなるほどと気づいて、先に進むトリガーを見つける役割を果たしているのである。

☆コーチングやファシリテートの手法のようなイメージではあるが、むしろ言葉や概念をひらくコミュニケーションをとると言った方が正しいかもしれない。難しくいうと、ヴィゴツキーの学習理論の核心である「最近接領域」を見つけるということだ。

☆この領域は、生徒1人ひとりによって違う。あともう一歩なのだが、そこに壁がたちはだかっている。このいまここにある目の前の壁を扉にして開くコミュニケーション能力を発揮するのがチューターである。

☆そしてチューターは大学生が最適なのである。なぜか、世代が同じだからである。どういうことか?最近接領域の発見は、チューターだけが見つけるのではない。チューターと生徒がシェアしたときに、アハ体験なのである。これができるには、同世代特有の文化や言語感覚がなければならない。共通した体験や言語をメタファーとしてお互いに使って理解しあえる情況がコミュニケーションの過程にないとアハ体験は無理なのである。

☆欧米で、授業でディスカッションをやるのは、教師と生徒のコミュニケーションのギャップ、つまり共約メタファーを使えない部分を、横の生徒間で補っているのである。そこに大学生のチューターが参加すれば、もっと促進する。そのとき教師は参与的オブザーバーになれるから、生徒1人ひとり違う精神的及び知的成長の段階を把握することができる。

☆しかし、把握できたからといって、生徒がアハ体験するわけではない。あくまで教師はアハ体験があれば次のステージにシフトできると期待するだけである。あくまで期待値なのだ。シフトするのは、生徒本人の力によるしかない。そのときの触媒は、最近接領域をシェアできるチューターなのである。

☆この授業や教育のコミュニケーションシステムこそもっとも優れた教育環境である。よく生徒のレポートや論文の指導を丁寧に行う教師は面倒見がよいと言われるが、本当に生徒と教師の関係だけで構成していくと、うまくいかないのだ。なぜなら、情報や知識の格差が、最近接領域を見えなくしてしまうのである。いきなり生徒がその格差をジャンプするわけにはいかない。まずは目の前の壁が問題なのである。

☆かえつ有明は、共学校としてスタートした時から、学習支援センターとサイエンス科を開設した。そのどちらにも共通するのは、教師と生徒とチューターの三位一体コミュニケーションシステムである。

☆この夏も、生徒達は合宿して学習をしているが、言うまでもなく、この三位一体コミュニケーションシステムを持ち込んでいる。

☆それにしても、タフなプログラムである。

5時、起床。
6時〜6時半、テスト。
6時半〜7時半、解説。
7時半、朝食。
8時半〜9時、テスト。
9時〜10時半、解説。
10時半〜12時、自習。
12時、昼食。
13時半〜14時、テスト。
14時〜15時半、解説。
15時半〜17時、自習。
17時〜17時半、テスト。
17時半〜19時、解説。
19時、夕飯、入浴。
20時半〜23時、自習。

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☆このスケジュールで見えないのは、「教師のケア活動」と「チューターと生徒とのコミュニケーション」である。多くの学校で夏季の合宿を実施している。スケジュールを見比べただけでは、質の優劣は実のところよくわからない。教師のケアとチュータのコミュニケーション行為があるかどうかが、微細だが重要な差異なのである。

☆かえつ有明の合宿で伴走しているチューターは、こんな目線で生徒とコミュニケーションしているそうだ。

質問は化学、数学が多いですね。基礎的な問題は少ないアドバイスですぐに理解してもらえます。難しいものに関しては記号の定義、問題の意味をすべて確認した上での対話を心がけ、いづれも理解を共有できました。みんな自分の解らない点を整理した上で、質問するようになってきたので、コミュニケーションもとりやすくなってきました。

☆教育工学的なコミュニケーションを形成しているチューターはいかにして育成されるのか。それは企業秘密ということだった。

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