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VIEW21臨増必見 未来を創る学校のヒントがある

☆情報誌は斜め読みして、興味と関心のある記事をつまみ読みするのが常なのだが、「VIEW21 臨時増刊号」(Benesse教育開発センター)は、全体を俯瞰するや、通して読まねばならないと直感した。

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☆大きく2部構成に編集さているが、それをとっぱらうと4層構造うになっている。

①データでみる高校生の「学び」に関わる課題

②高校生座談会

③「教育関係者+企業人」座談会

④ケースメソッド 学校の取り組み

☆データ編では、高校生は後悔とどうしてよいかわらないという不安とある意味パニック的な情況にいるということが映し出されている。企業に対するデータは2008年のものでリーマンショック以降の現在とその直前直後のデータでこんなに開きがあるのかというのもおもしろい。

☆2008年まで企業は大卒者に社会人常識とチームワーク力、自己管理力、問題解決力、リーダーシップ力を期待している。社内活性化力としてはそうだったのだろう。しかし、英語プレゼンテーションスキルや英語討議力はほとんど期待していない。世界はもう10年も前から21世紀型スキルの教育をめざしているというのに、日本は背をむけていたのだ。

☆インターネットやモバイル時代の高校生は、サイバースペース上では、世界の動きを感じている。しかし五感でとらえることはできない。だから、焦るばかりだ。自分ではどうしようもないところに世界がある。自分たちのいる場所はそうではない。このGAPをどう埋めるのか。勉強しなければと焦るけれど、何をやっていいのかわからない。それは能力がないのではなく、現実世界とコミュニケーションをしていないからである。

☆コミュニケーションをしないということは、そこに情報格差が生まれる。知識基盤社会にあって、情報格差こそ権力や富の格差に結び付く。この力の差が抑圧状況をつくるから、そこから脱することができない高校生のストレスは高い。いかにしてそれを解消するのか。

☆そこで高校生座談会。この抑圧状況、情報格差、コミュニケーション不全症候群から脱する道を拓いてくれる教師を頼りにし、距離の程よいコミュニケーションを求めている切なさが伝わってくる。脱する目標が大学受験というのもどこかさびしい。

☆高校生はある意味洞窟の中に閉じ込められている。そこに強いリーダーである教師がいることを望み、情報は洞窟の壁に開けられた小さな隙間から外をのぞく形で得られるのである。大学受験は、その洞窟の中で情報格差がもたらす階層構造の頂点にいくための対症療法にすぎない。

☆そして教育関係者と企業人による座談会。参加している企業人は、すでに洞窟の外に出て、高校生をなんとか洞窟から出してあげたいと熱弁をふるう。洞窟の中で人間として土台はできないよ。そんな準備は外に出てからやればよいと。

☆一方教育関係者は、かなり開明派の方々ではあったが、軸が洞窟の中。そこでなんとか高校生を外にだしてあげたいと望んでいる。しかし、軸が中にあるために、洞窟の中で人間力づくりの土台をつくってあげたいと。洞窟の中にいるから外のことは生徒はまだわからないから天職をその中できめるのは危険だと。

☆失業率はあいかわらず高く就職率も安定しない。つまり、それは高校生や大学生の問題というより、与えられる選択肢には限りがあると読み取らねばならないが、基礎力が足りないからという因果関係を持ち出してしまう。一方、選択肢を自分で作る時代だと企業人は語りかける。

☆この企業人と教育関係者のGAPはどこから生まれてくるのか。それは五感による情報収集の教育がなされていないから、「全体に向けた話を自分のことに置き換えて解釈する力が落ちている」と山河氏は鋭く指摘。

☆簡単に言ってしまえば、想像力やメタファーのコミュニケーション能力が不足しているということだろう。麻布の氷上校長だったら、世界の激動の変化を日常生活の中で感じ取るコミュニケーション能力というだろうか。

☆高校生が頼りにするリーダーは、開明的な教師しかいない。しかし、その開明的教師の外部環境に対する理解は、2008年までの企業観。しかし、先を見越している企業人は、もはやそこにはいない。

☆このズレを、新たなコミュニケーション能力で解決しようと。小村氏はこう語る。「教科が実社会に役立つことを伝えるには、企業と連携しなければ」と。

☆そこで、西武文理のようなマイクロソフトと連携するロボット講座のケースメソッド。佐野先生はこの講座を通してこう感じている。「勉強が出来る生徒よりも、失敗を恐れない積極的な性格の生徒が生き生きと指示を出す姿が印象的で、普段から多様な評価軸を持つことが必要だと痛感しました」と。

☆この多様な評価軸を教師と生徒が共有するコミュニケーション教育は、21世紀型スキル教育であるし、「全体に向けた話を自分のことに置き換えて解釈する力」を養う教育でもある。

☆壮大な夢を、自分の身に染みわたらせる力、世界の痛みに共鳴できる感性。社会と学校を結び付ける役割をベネッセは担うという宣言書ともいえるView21となっているのではないか。

☆しかし、問題は結び付け方なのである。出会いは結び付けの始まりに過ぎない。結合は足し算ではあるまい。今回は「教育関係者+企業人 座談会」であったが、次回は掛け算になる。そういう予告編でもある。

☆洞窟から高校生が出るには、教師がエールを送ったり、檄するだけでは動かない。企業人が外から呼びかけても動かない。結局、高校生自身が自己改革を内側から起こさねばならない。

☆ベネッセのもう一つの強みは、この高校生自身の内側にアクセスできる手法である。しかし、それはまだ同誌では明かされてはいない。最後に高校生が自ら火をつける仕掛け。それは一体いかなるものなのか?

☆もしもこの手法が見つかれば、学校は洞窟から解放されるし、公立私立を分ける必要がなくなる。もちろん偏差値も不要。なかなか興味深いことを考えているのかもしれない。ともかく世界は知識基盤社会における情報格差を解消するコミュニケーション能力の開発に挑んでいることは確かなのである。

☆日本では、まだ緒についたばかりである。そこを促進するのはベネッセのような教育産業の役目かもしれない。

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