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21世紀型私学市場の模索

☆またまた、塾の再編。さなるが(株)栄光の筆頭株式になったり、明光ネットワークと早稲田アカデミーが資本提携したり・・・。今や受験市場は学習塾という株式会社が持続可能にしようと躍起となっている。

☆これによって、一方では面倒見のよい顧客のニーズに完全対応したサービスが得られると同時に目先の利益を得るために、私立学校を偏差値的に差別化し、東大を頂点とする進学実績志向をますます強化する動きになっていくだろう。

☆そんなことはないという話は受験市場の中からも聞き及ぶが、資本の論理から冷静に考えると、それは不可能である。なぜなら受験市場の扱う知識が、20世紀型スキルの積み重ねであり、この知識の体系をどのように打破するというのか。

☆21世紀型教育というのは、大学カルチャーとクール・ジャパノロジーの知の垣根を乗り越えてしまう新しい知識にもとづく、いわゆる知識基盤社会を形成するシステムであるが、そんな知識はまだまだ教育において市場を創出していない。

☆文科省がどんなに21世紀は知識基盤社会だと叫んでも、その知識が、クール・ジャパノロジーをサブカルチャーとして大学カルチャーの下位に位置づけている限り、本当の意味で知識基盤社会になどならない。

☆クール・ジャパノロジーとは、ある著名な大学教授が、オタク系の領域と一笑に付してしまうほど理解されていないし、それゆえ市場が形成されていない。経産省などは、このクール・ジャパノロジーを学的視点でみることなどせず、欧米で人気があるのだから販促しようということになっている。ネガティブかポジティブかの違いはあれ、クール・ジャパノロジーに新しい知の可能性、21世紀型教育スキルの潜在性を感じ取っていない。

☆クール・ジャパノロジーの系統は、アニメであり、アキバであり、村上隆に代表されるコンテンポラリーアートであり、東浩紀氏に代表されるアンチ現代思想でありアンチ教養主義である。

☆夏目漱石や森鴎外、ハイデガー、カント、デュシャン、アリストテレス、ベンサム、柳田国男、アインシュタイン、ボーアなどなどありがたがっているような、つまりそれらの権威に屈するという意味でリスペクトする教養主義的知識の体系を切り崩すのがクール・ジャパノロジーの動きである。

☆誰でもが夏目漱石を超えられる、ハイデガーを超えられる、アリストテレスもアインシュタインも超えられる、そういう知識基盤社会が21世紀型教育スキルなのである。

☆1989年ころまでの教養主義的知識人は、欧米の知識を整理し、物象化し、定型化することによって、大学という既得権益を持続可能にする市場を形成してきた。あるいは資格社会の市場を形成してきた。

☆したがって、彼らが制度的に整備してきた言説を使って制度的にコミュニケーションできない人間を学力が低いと排除してきたのである。偏差値という評価学はその呪縛から本来逃れようと活用されてきたのだが、完全に強化する側に回っている。

☆つまり、偏差値は制度コミュニケーションの中に入り込むための戦略的なコミュニケーションの言説になっているである。それゆえハーバーマスは生活世界のコミュニケーションの復権を唱えるのだが、ポストモダニズムは、生活世界を消費世界に包摂してしまった。

☆生活世界コミュニケーションも今や制度化されている。したがって受験生の保護者の視点や思考様式も、すっかり20世紀型教育の言説に包囲されている。しかし、今では保護者もそれらをつかいこなし、ときにはその言葉を刃として学校に向ける時代になっている。

☆コミュニケーションが大事な時代だとは、このような制度的コミュニケーションの重層構造を解体し新しい知識を拓く、全球回復のコミュニケーションのことなのだが、そこにいきつくにはあまりに多層な制度的コミュニケーションが積み重なっている。

☆だから、そんな本質論的な解決をするよりも、受験市場では、かつてのメガバンクの流れを踏襲し、イノベーションなき資本提携という実は資本の論理に反するあがきが行われているのが現状なのである。

☆しかし、逆説的なのだが、本当に企業が資本の論理に従えば、イノベーションにより21世紀型教育スキルを生み出す知識基盤社会の市場創出にチャレンジするべきなのである。そんなこと筆者が言うまでもなく、やはりそういう資本のセオリーに忠実な健全な企業態も既にある。そこが動き始めているのだから、希望の光は消えていない。

☆そのような企業とイノベーションを起こしている私立学校が組むことによって、イノベーションなき資本提携でビジョンという物語を喪失した受験市場に対して、新たな教育市場創出の動きもあるのが現状である。

☆しかし、その新たな市場は、イノベーションによる資本の活用を考えている企業の人材の頭の中にしか存在していないがゆえに、多くの人は気づいていないし、気づいていたとしても夢物語であると頑なに拒絶しているのである。

☆それでも、新しい知による知識基盤社会のグローバルな市場形成は、止まらない。そこをエンジンにできた企業や学校がサバイバルすることはおそらく間違いないだろう。なぜそんな戯言を語れるのか。私が出会う起業家、企業人、私学人の多くはそう思っているし、そんな話=熟議ばかりしているのが最近の情況だからだ。そういう企業人と起業家と20校前後の野心ある私学人が協力すれば、新たな市場は生まれ、やがて席巻するだろう。それが本格化するのが2012年なのである。

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