21世紀型私学市場の模索[05]
21世紀型私学市場の模索[04]のつづき。
☆ベネッセの小村氏と共立女子の渡辺校長をお訪ねした。小村氏は、おそらく内外の教育イノベーションの最前線で活躍している人物(ユヌス氏、MITメディアラボの石井氏、SFCのスタッフ、鈴木寛氏etc.)と最も多く熟議的対話をしている人材だ。ベネッセという教育産業組織の懐の深さに驚愕するが、それがベネッセが躍進するエネルギーの源泉なのだろう。まさに人財の豊かな組織である。
☆渡辺校長に会うなり、小村氏はこう問いかけた。
この間MITメディアラボの石井氏と話をしていたときに、「21世紀の学びは21世紀のめがねで」と言われて、ハッとしました。いくら21世紀型スキル教育をやっても、20世のめがねでみてしまうと、その重要性に気づかないし、なにを遊んでいるのだと言われかねないと思うのですが、渡辺校長はどう思いますか?
☆渡辺校長は、
うちの教員がそういう意識を自覚しているかどうかはわからないけれど、そもそも20世紀型ではすでにないかもしれないですね。
☆と。だから、受験市場からはまだ気づかれていない良質教育がいっぱいあるわけであるが、小村氏は、こうフォローした。
そうですね。絵本作りを教科を横断して行っているプログラムも独自に作られているのですよね。そういう学びが学内で認められているというのは、たしかに21世紀型ですね。ある会で、大学について語らなければならない機会があったのですが、そこでこう言ったのです。20世紀型の大学は、学生証と卒業証書があればそれでよかったのですが、21世紀はそうはいかないでしょうと。すると多くの大学人がそうだと賛成してくれるのです。だから、つい饒舌になって、そんな身分証明書だけ得るだけの価値しか今の大学入試問題はないのだと、身分証明書を発行するには、回答がある問題を出さねばならない。でも21世紀はそうではないでしょう。
☆すると渡辺校長は、
そう正解は1つでないし、もしかしたらないかもしれない問題ばかりが、今の社会です。それに耐えられる思考力や柔軟でタフな心は、学習指導要領以上の学びが大切で、その点に関するプログラムは、おそらくウチはいっぱいありますね。
☆と、美術の時間に制作した膨大な生徒の作品のポートフォリオを取り出して小村氏に見せた。すると回転の速い氏は、
大学入試に関係ないことを真剣にたくさんやっているところこそがイノベーティブスクールということですね。
☆なるほど、わかりやすい表現である。大学入試に関係あることに絞って効率のよい勉強の環境をつくっているところはいわゆるエリートスクールなのである。なるほどなるほど。
☆渡辺校長は、
だから久しい間、礼法という講座を続けているのですよ。これなど大学入試にまったく関係ない(微笑)。
☆すると小村氏は、
20世紀のめがねでみたら、礼法の新しさはみえませんね。しかし、21世紀のめがねでみると、礼法は相手とのコミュニケーションをつくる環境を目の前に広げる事ですよね。礼法の型=フォーマットがコミュニケーションの地平を拓くというわけですね。
☆渡辺校長は、なんといっても廣松渉の弟子だから、物象化された「物」の背景に関係総体の「事」的世界を見出す存在論的認識論の立ち位置にいる。だから、ここで共鳴共振したようだ。
イノベーティブスクールは、目に見えない背景に光を当てる思考の技術を開発している学校ということですね。
☆なるほど、小村氏はこうやって熟議的対話を広めているのかと、感心した。新たな教育市場の創出は、こうして生まれてくるのだろう。
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