速報 鈴木寛氏のスピーチ
☆鈴木寛氏のスピーチが2時間を過ぎた。ここで5分間の休憩。そして、今再度始まった。前半は、ガッチリなぜ民主主義は完璧でなく不完全で、それゆえ参加する市民のストレスはなくならない。このことを学問的に知っておこうという流れで、ハーバーマスやアレント、ロールズ・・・などなどの思想を講義。
☆要は、公共圏の再封建制、無思想性によるアイヒマンのような純朴な人間の残忍性、ルサンチマンによる美的感性のバッシング(ニヒリズムか)を生み出す、システム過剰やテクノクラートによる国家コーポラティズムになってしまうのが従来の民主主義であると。
☆その傾向に加担するのは、現状のメディア環境であり、それに作られた代議制民主主義は、功利主義的なイデオロギーの枠に市民を回収してしまう。しかもIT革命によって、国内法のキャパを超える事件の頻発はもはや防ぎようがないと。
☆だから、今の政治はダメだよと無関心なフリーライダーでよいのだろうか。システム過剰から脱システム化へ、労働から活動へ、システムから存在へシフトするにはどうするか考え、政策を作らねばならないのではないかと。おっしゃる通り。
☆そして、後半は、極めて具体的に、そのようなパラダイム・チェンジのために熟議デモクラシーへの道を只今説いている。ただ、その内容はあまりに高度な(というよりメディアが注目していない誰がどうしたという話)政治上の問題がありそうなので、本ブログではそこまで書くことができない。
☆いずれにしても、ガバメント・ソリューションにどのように熟議を持ち込むか。マーケット・ソリューションにいかに熟議を持ち込むか。コミュニティ・ソリューションに、いかに村落共同体にならにような熟議を実現するか、ということを「熟議」しなければならないということか。
☆「熟議」とは、もともとなぜ合法的にナチが生まれたのか、純朴な人間が残忍なアイヒマンになったのか、その近代国家の矛盾を解消するための契機である。ガバメントやマーケットのソリューション以外に、公共圏によって、議論を熟し、参加者がそれをさらに深め・学び、その過程の中で、それぞれの参加者の考えが変容し、合意に到るコミュニティ・ソリューションの活路を拓くのが「熟議」であると。
☆しかも、実は日本人はメディアによるステレオタイプ化を払拭さえすれば、熟議によって新たな地平を切り拓くことができる基礎力を有しているということは忘れてはならないという日本人に対する信頼と望みを表明しているのは、複雑な思いはあるものの、それは確かにそうだなと私も思う。
☆小学校1年生から3年生と話をするときがあるが、十分に「熟議」ができるからである。
☆なるほど、熟議デモクラシーが馴染む分野は、鈴木寛氏が言うように、医療・教育=共通善の分野である。
☆それにしても、教育の分野で共通善を追究するというは、現状難しいだろう。鈴木寛氏自身、現状の代議制民主主義は功利主義的国民を生み出すと言っているからだ。功利主義的では共通善を望まないないだろう。
☆その点、私立中高一貫校は、理念という思想に支えられている。現状の壁を拓くのに、私学の教育を公立の教育にシフトすることは、1つの突破口であろう。私学と公立の「熟議」もまたポイントになるかもしれない。そんなことを考えていたら、2時間40分にわたるスピーチはあっという間に終了していた。学問的な政治家というのはいるものなのだと、今さらながら驚いた時間だった。
P.S.
多くの学者の名前が挙がっていたが、その中でも鈴木寛氏の思想的ベースはハーバーマスのコミュニケーション行為論なのではないかと感じた。戦略的コミュニケーションと存在論的コミュニケーションの葛藤をいかに超えるか。そう単純ではないだろうが、昔N研でカリキュラムを創ったとき、ベイトソンとかハーバーマスのコミュニケーション行為論をどのように教材やテスト評価にブレイクダウンするか、あるいはアレンジするか苦労したのを思い出した。そのとき、誰にも理解されなかったので、権力的コミュニケーションで押し通すという自己矛盾をおかしていたが、ともあれ、懐かしい。もちろん、今でも、コミュニケーション行為を分析するとき、簡易ハーバーマスの指標を使っている。時代の要請のマッチングが最適状態になってきたのかもしれない。
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