受験市場の私立中高一貫校人気の理由が縮小化をもたらしている?
☆サンデー毎日(2010年9月19日号)「学習塾オススメの中高一貫校」の記事には、「私立6カ年一貫教育の人気の理由はどこにあるか?」というデータが載っている。
☆その理由のベスト5を列挙してみると、
1)公教育への不信
2)私立の面倒見の良さ
3)大学合格実績が公立に勝っているということ
4)私立の教育の方が熱意があるということ
5)高校入試がないゆとり教育
☆私立中高一貫校の最も重要な、かつほとんどの公立学校では形骸化している理念や独自の教育への思想は、6位や8位である。
☆これでは、文科省の脱ゆとり路線、グローバル人材育成路線、熟議デモクラシーの教育への活用(つまりコミュニケーションという面倒見良さのテコいれ)、進学重点校の推進、公立中高一貫校やコミュニティスクールの開設という流れによって、私学人気が勢いを失うことになる。
☆確実に文科省や教育委員会は、「分かち合い」の経済思想をベース(高校無償化はその一角)に、
1)公教育の信頼回復
2)教師と生徒のコミュニケーションの改善(垂直交流から水平交流へ)
3)大学合格実績向上の政策
4)教師の熱よりもシステムや教育環境の改善(デジタルネイティブ養成など)
5)高校入試制度の改善(京都の教育行政、公立中高一貫校の増設など)
☆以上のような教育政策を進めている。
☆つまり、受験市場か土台としている私学人気の理由ベスト5は、すべて覆されているというのが現状である。私学人気の理由が人気を弱めているというパラドクスが起きている可能性がある。
☆今年一般財団法人になった東京私立中高協会が、改めて建学の精神という理念を前面に押し出し、その理念に基づいて、教育活動や生徒募集戦略を現代化していることを世に広めるために、5月に国際フォーラムで、イベントを開催した。私学vs公立という枠組みを自ら作って苦しんでいる受験市場に対し、その枠組みを廃棄して私学独自の理念による教育を受験生とその保護者を巻き込んで共有しようというメッセージだったはず。
☆今文科省の一部官僚が、副大臣鈴木寛氏と高度な教育学や教育イノベーション、そして熟議デモクラシーを学問的切り口でしっかり勉強し、すでにそれをコミュニケーション行為として活動し始めている。
☆もちろん、最終的には1つの理念や思想にまとまることは制度上できない。そのことを官僚は知っている。にもかかわらず、その教育行政の諦念や限界を抱きながら、動き始めている。幕臣に勝海舟や福沢諭吉、江原素六などがいたように、ガバメントソリューションをあなどることはできまい。
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