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受験市場の学校選択判断は功利主義的傾向

☆「サンデー毎日2010年9月19日号」には、「保護者は志望校を選ぶ際に何を重視しているか?また、そのうち最も重視している3つは何か?」という質問に対する回答データが載っている。

☆25項目が多い順に並んでいるが、それぞれの項目を、外発的要因なのか内発的要因なのか、特徴づけをしてみた。

☆外発的要因で学校を選ぶ場合、それは子ども自身の内面的な自律よりも、外的な環境を大事にしている可能性がある。内発的要因で学校を選択判断する場合は、他者の目や流行よりも、まずは子ども自身の内面の豊かさや自律を大切にしている可能性がある。

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☆受験市場において、よく顧客満足という話題がでるが、顧客の外発的ニーズを満たそうとするのか、内発的ニーズを満たそうとするのか、実は不問に付されている。売れれば良いのである。受験市場だけが大量消費・大量生産というポストモダニズム経済の例外ではないから、やむを得ない。

☆サンデー毎日のデータを、2つの要因に分類して、表をつくり、単純にそれぞれの割合を加算すると、外発的要因が458.4ポイントで、内発的要因が、225.2ポイント。両要因のポイントに占める内発的要因の割合は、32.9%である。

☆約7割は、ケインズの人気投票理論。経済的選択はテクニカルな要因で決まるのであって、ファンダメンタルな要因で決まるわけではないのである。ただし、これはあくまでケインズ経済学の枠組みの話だが、その枠組みに比べまったく異質の枠組みで今の経済システムが成立しているわけではないから、あたらずといえども遠からずなのだろう。

☆もしも、公立学校にこの選択傾向を当てはめたらどうなるだろう。そもそも90%の公立中学は選択という概念自体当てはまらないから、実は恐ろしい話なのであるが、校風(理念も含んでいるから)という項目はまずはなくなってしまい、内発的要因を形成している中でも一番影響力のある項目自体が消失する。

☆ポストモダニズムは大きな物語=共通の価値意識が消失してしまったとはよくいわれる話だが、公立の学校選択においては、まさに理念を消失しているということに一致する。公立だって理念はあるのだということではあるが、憲法という抽象的な理念はわかるが、それが学習指導要領という媒介項によって具体化する過程で、消失しているのが現状であるし、私立学校の理念とは宗教性が含まれているから、そのような理念を公立学校が議論する余地もはじめからないのである。

☆それに比べれば、私立学校の選択の機会は、内発的要因を考えるチャンスになっていることは確かではある。しかし、経済合理的な功利主義的流れに押され気味である現状であることも否めない。

☆内発的要因を大事にする発想は、社会的正義を基礎とする発想や共生協働主義的な発想である。果たして、そこを大いに議論しているマイケル・サンデル教授の影響や友愛革命を掲げている民主党政権の発想の影響はどのくらい有効なのだろうか。

☆百年以上前に福沢諭吉が議論の重要性を説いたが、今やっと議論らしきコミュニケーション行為が始まったと評価できるのだろうか。価値の押し付けから価値の対話ができる公共圏の構造転換が起きているのだろうか。。。もし起きているのだとしたら、受験市場という公共圏の変質も期待したいところである。

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