小石川中等教育学校から見えるガバメントの強さ
☆本ブログ「受験市場の私立中高一貫校人気の理由が縮小化をもたらしている?」で、
「確実に文科省や教育委員会は、「分かち合い」の経済思想をベース(高校無償化はその一角)に、1)公教育の信頼回復。2)教師と生徒のコミュニケーションの改善(垂直交流から水平交流へ)。3)大学合格実績向上の政策。4)教師の熱よりもシステムや教育環境の改善(デジタルネイティブ養成など)。5)高校入試制度の改善(京都の教育行政、公立中高一貫校の増設など)」
☆を実施していると書いたが、小石川中等教育のイノベーティブな講座を見学しに行ったときに、そのことを確信。
☆小石川中等教育学校は、1)から5)すべて妥当。そのうえで、徹底した読書指導。それをサポートする学習センターとしての図書室の機能充実。しかも教科横断的指導は当たり前。つまり、新書を充実し、その読書指導を徹底している。
☆そこを学習拠点として、理数系重視。生徒も中1から理数系に進学するために入学したと考えている。もちろん、それが個人の選択意志決定というよりは、理系離れに危機を感じる教育行政というガバメント・ソリューションの一環ではある。
☆しかし、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)として、その成果は着々。たとえば、国際物理学研究コンテストで、多くの受賞者・入選者を輩出している。ポーランド科学アカデミー主催のコンテストであるから、論文はもちろん英語。その指導を理科の教師が行える。また、受賞者は、ポーランドの科学アカデミーで一ヶ月間留学のチャンスをもらえる。
☆したがって、英語教育も学内全体で力が入れられている。中3で2週間のオーストラリア研修があるが、それを目標に中学の英語教育は準備がなされる。
☆私立学校に比べて、図書機能やプロジェクト学習、英語教育がどのくらいのレベルか、そのレベルが特に優れているということはないかもしれないが、学費はかからないのだ。
☆大事なことは、ガバメントソリューションで、私立学校の教育の質をある程度保証することができるということなのだ。上からの制度による教育と市民社会的ルールを構築しながら運営する教育。後者は、ガバメントソリューションとマーケットソリューションとコミュニティソリューションの統合をしなければならない。それゆえ苦悩の中から創意工夫がなされるわけだ。
☆しかし、ガバメントソリューションだけで進める教育は、国家が危機に直面しているときは改善がテーマになるがゆえに、情報収集により、イイトコドリができる。
☆しかも、生徒募集の戦術の中に、適性検査に小学校の報告書のスコア換算して加算する制度がある。800点満点中200点であるから、これはかなり影響力がある。優秀(この意味は実にあいまいだが、すくなくとも道徳的エリートではある)な生徒を吸い上げる制度ができているのだ。
☆もちろん、公立中高一貫校というモデル校のみの話ではあるが、実はコミュニティースクールという制度で、一般の公立学校にそのモデルで構築されたエッセンスを流すことができる。
☆私立中学受験の大衆化の崩壊というシナリオが無意識のうちに描かれているのである。少なくとも中学受験市場は、寡占化し、中学受験を大衆化してきたところはどんどん消失していく可能性がある。
☆クオリティスクール、エクセレントスクール、イノベーティブスクールといった50%の学校に応募が集中することになる。
☆景気が回復すれば、大衆化路線は再び生まれるかもしれないが、そうでなければ、智慧資源をめぐる争奪戦が激しくなる。しかし、それはなかなか大衆化しない。
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