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2012年から2020年にかけて良質教育を実行できる私立中高一貫校の条件

☆ 「大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕」(諸星裕著 角川書店 2010年10月)は、実に参考になる。

☆とはいえ、日本の大学の現状については、実は何も新しい視点はない。ただよく整理されているので、私のように高等教育の情報を直接収集していない者にとっては、それはそれで役に立つ。

☆同時に、この状況は大学のみならず、日本の初等中等教育にもあてはまることでもあるから、私立学校にとっても生徒募集の方法や授業が重要な点については再確認ができる。

☆しかし、本当に重要なことは、本書の背景にある。諸星氏のアメリカでの体験と本書の「おわりに」の5ページに書かれている、欧州の「ボローニャ宣言」の情報が最重要なのである。

☆今年は、1999年の「ボローニャ宣言」に参加した欧州46カ国による、いわば欧州高等教育共同体の成果が発表される年だという。

☆1つのヨーロッパを目指し、その経済や政治、法整備、環境などを持続可能にする見識の高いヨーロッパ市民育成のために採択された宣言である。ここまでは、すばらしいが、46カ国の中にはEU加盟国以外の国が入っている。たとえば、トルコ。

☆そうなのである。欧州はEUの力を拡大するために、まずは教育のすそ野を広げる決定をし、ボローニャプロセスというプロジェクトを立ち上げて、着々と実行しているのである。

☆今年3月「ヨーロッパ2020」をEUは発足。2020年に向けた政治経済と教育の戦略である。ここに、ボローニャプロセスは見事につながるのである。

☆アメリカが静かに焦っている。というのも、この欧州高等教育共同体(勝手に私が便宜上呼んでいるのだが)の人口は、アメリカの人口の3倍である。学生数もおそらく倍以上になるだろう。

☆アメリカの大学は10年はやく、日本の大学全入時代を迎え、その学生獲得戦略は実証済みで、そのノウハウを日本は取り入れ始めているが、ETSのようなテスト測定学をベースにした知のマーケティングができないから、ほぼ座礁している。むしろ中学受験の方が模擬試験を活用して、ETSのようなマーケティングベースの生徒獲得戦略を先進的に行ってきた。

☆だから、大学受験予備校が中学受験塾を買収したり資本提携する本当の理由はそこにあるわけだ。気づいているかどうかはしらないが。逆に言えば、中学受験を認識していない大学受験予備校は、2020年までサバイブできない可能性大。

☆同じことが大手の中学受験予備校や塾にもあてはまる。大学受験予備校と連携できなければ、高大連携ではなく高大接続という動きについていけないから、先細る。

☆ともかく、日本がそんなガラパゴス的な動きをしているうちに、今や、アメリカの大学は、このボローニャ宣言下の欧州高等教育共同体のリサーチを深く広くし、サバイブを企図している。この段階で欧米の大学の経営、研究、教育は、日本の大学のはるか先を行っているのである。

☆ところがだ、先にのべたように、私立中高一貫校は、すでにアメリカの大学のような戦略を行っているし、実は自前で欧米の教育環境を結び付け、精神としてはほとんどボローニャ宣言に近い発想を行っているところがあるのである。それが3TRXを満たしているところなのであるが、そのような私立中高一貫校は、きたるべき2012年の世界の大転換から2020年にかけて飛躍する教育の質の基礎付けを盤石にするだろう。

☆ボローニャ宣言が成就するかどうかは問題ではない。すでにそのプロセスは「ヨーロッパ2020」に引き継がれているのだ。アメリカの人口の3倍の公共圏が出現するのである。

☆東アジア共同体の構築について、東大を始めとする多くの大学の帰国生入試で、小論文のテーマとして出題されているが、まさにその構築は日本の死活問題になってくるはずだ。

☆世界の激動というより右往左往している状態が、政治経済に反映しているが、基礎基盤のところでは教育によって世界を大きく変えようとする準備が着々整っている。その影になんと結局UKの教育改革が大いに参考にされているのだ。そこには微妙に覇権争いがあるだろうが、進まないわけがない。

☆2012年まで円高傾向が続くと言われているが、この円高を活用して、世界を駆け巡っている私立中高一貫校の先生方がいる。

☆彼ら私学人が見てきたものは、もはや子どもたちは世界の舞台で生きてるということだ。それなのに日本の教育は、子どもたちをまだ世界の舞台に出していないと錯覚している。

☆隣人はすでにグローバルルールのツールを使い、そのルールでロールプレイをしている。それなのに、なぜそこに気づかないのだろう。子どもたちに目隠しをして、高速道路を歩かせているようなものなのだ。

☆そのことを気付かせてくれる私立中高一貫校はどこか。その前に親がマスクを自ら捨てなければならない。

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