クリエイティブ・コミュニケーションができる学校
☆コミュニケーションが大事であることは、今や誰も否定しないだろう。しかし、実際にコミュニケーションが何であるか、理解するのは難しい。
☆コミュニケーションというと、愛だ信頼の絆だ共通善だということになる。それはその通りである。
☆しかし、コミュニケーションは、道具としての言葉と同意であるという認識もまた広く浸透してしまっている。
☆言葉は道具なんだと。愛も信頼も共通善も道具も混沌としているのがコミュニケーションをイメージする場合の状況である。
☆1つとして間違いはないが、混沌は混迷を生み、誤解を生み、幻想を生み、戦いを生みだす。混沌は常に矛盾やパラドクスを生みだすからだ。
☆しかし、すでにこのことを解決する発想が、欧米の中では開発されている。それが発達段階という発想である。これは実際にはソクラテスやプラトンの弁証法(ダイアローグだから対話ということ)の文化遺伝子があるから、当然と言えば当然である。
☆言葉は道具であるという認識段階もあるだろう。言葉は信頼という認識段階もあるだろう。言葉は愛という段階もあるだろう。言葉は互いを尊重し合うという段階もあるだろう。言葉は自己実現という存在そのものの段階もあるだろう。
☆なんだマズローではないかと。マズロー自体はフロイトの発想を換骨奪胎しているわけだから、これもまた欧米の歴史に根をおろしている。
☆OECD/PISAはさらに言葉道具説を細分化している。情報を確認する段階、情報を整理する段階、情報の差異を認識する段階、情報を論理的に整理する段階、情報を批判的に思考する段階、新しい情報を創造する段階。
☆これはアメリカの認知科学者ブルーム派のタクソノミーの認知構造にも似ている。ハーバーマスやコールバーグのコミュニケーションやパースペクティブ(これ自体視点から世界観への発達段階がある)、道徳などの発達段階は、道具レベルではなく、自己実現のレベルまで包括している。
☆ピアジェやビゴツキーの発達段階は、幼児期から学童期までが中心になっているが、その後の精神発達段階を引き継いでいるのが、ハーバーマスやコールバーグだし、現在のMITラボの研究者たちだ。
☆日本の教育現場で、このような議論がなされるチャンスはほとんどない。それはこの発達段階を偏差値の伸長で置き換えてしまえる。しかし、本当に置き換えたことになどまったくならない。偏差値とは母集団の中での位置づけに過ぎない。精神の発達段階とは程遠い。
☆だから、高偏差値で言葉道具段階しかもその道具段階の一番初期段階である情報の確認=知識を記憶する次元で成長しきっている秀才が生まれる。これが日本のポストモダンの悲劇である。
☆この段階の秀才とコミュニケーションしても、手続き的には効率がよいわけだが、だからといって化学変化が起きない。なにもクリエイティブな発想は生まれない。DE-sign思考は作動しない。
☆言葉あるいはコミュニケーションが自己実現のレベルまであるということが教養であり、リベラルアーツが目的とするところだ。情報を確認するレベルでの、つまり多くの難しい知識を知っているというこの初期次元での競争で優秀な状態になることを、日本では教養主義と言ってきた。そのような教養主義が、このIT時代に衰退するのは当然である。
☆この日本のポストモダンの悲劇を救済するのは、教育においてコミュニケーションや言葉、つまり精神の発達段階を高次のレベルまで育成するプログラムがデザインされている学校である。
☆つまり、クリエイティブなコミュニケーションに満たされている学校である。プログラムが明らかに高次精神発達を育成することが表現されている学校である。
☆基礎→応用→発展などという表現は、言語道具のレベルを表示しているにすぎない場合があるから要チェックであるが、明かに高次精神発達のプログラムデ‐ザインがされている学校は、思いつくまま列挙すると、麻布、女子学院、鴎友学園女子、東京女子学園、八雲学園、佼成学園女子、かえつ有明、広尾学園、白梅学園清修、土浦日大中等教育学校、順天、田園調布学園、淑徳巣鴨、富士見丘、海城、桐光学園、聖学院、聖園、共立女子などであろう。
☆他の私立学校も理念が支えているから、当然高次精神発達段階は織り込み済みであるが、プログラムとしてデ‐ザインされていないと、多くの生徒がそのように成長するとは限らない。
☆まして、公立中高一貫校や都立の進学重点高校などは、言語の道具の発達のデザインはきっちりなされているが、高次精神発達については、保留されたままである。したがって、ステレオタイプなすぐれた表現者が現れる・・・。
☆もちろん、その殻を破る人材もいるが、その殻は国家の見えない文化的規制に過ぎなかったりする・・・。
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