開成の生田先生に学べ[07]
開成の生田先生に学べ[06]のつづき。
☆前回の教材プリントの基本的な構造の図の枠が「授業」の部分であるが、生田先生は、その授業について、こう述べている。
「授業」は、4つの「教授―学習活動」で成り立っていると考えています。第1に、学習課題がどのような課題か、問題や課題の所在に「気づかせ」ます。第2に、適切な資料を選択して課題を検討します。そこで気づいたことをもとに、第3に、課題の中にある因果関係・他との関係性などを、根拠を示して説明できるようにします。そして、第4に、ここまでの「教授―学習活動」をまとめて、学習課題全体像を明確にします。さらに単元学習終了時に、テストによって「授業」を評価します。
☆この4つのステージに進むには、→印における発問が重要な役割を果たすと。生田先生はその発問の内容についてこう語る。
次の段階に進むために、仮説を立てる、比較をする、類推する、要約をするなどの学習活動をともなう疑問文を提示する・・・・・・このような「問いかけと気づきの連鎖」が続くように組み立てることによって、授業全体がひとまとまりの構造をもった「授業」になっていきます。
☆ここに開成の授業と生徒たちの学びの秘密がある。というのは、一般には、一回の授業で、問いかけは、「仮説を立てる、比較をする、類推する、要約をする」という流れを一回のサイクル通過すれば終了になるだろう。
☆しかし、開成の場合は、「授業」の4つの段階に移行するごとに、「仮説を立てる、比較をする、類推する、要約をする」という問いかけが行われる。「4つの段階×4回の問いかけサイクル」が最小限行われている可能性がある。
☆つまり、これがディスカッション授業の基礎である問答法の奥義であろう。授業とテストの違いはここにある。授業では最低でも4回問いかけのサイクルが行われるが、テストでは1回である。
☆授業の方がテストよりも密度が高いということなのである。これが話し言葉と書き言葉の違いでもある。才能はまさに話す場から生まれる。
☆しかし、日本の教育は、話し言葉は貧困で、書き言葉が重視されがちだ。ここに才能が掘り起こされない原因があるのかもしれない。
☆さらに、生田先生は重要な課題を提示されている。
図には、参考のために、GERSMEHL,P.(2006)“Teaching Geography”で提示された学習ステージと、OECD国際学力到達度調査(PISA)で提示された段階的な学習ステージを並べて示しました。これらの授業が、私の授業のしくみと似ている理由の説明は、これからの研究課題だと思います。
☆教材プリントの基本的な構造の図の枠である「授業」の部分は、従来の講義形式の授業では実はほとんどなかったのである。89年ベルリンの壁崩壊後、世界の学びは変化し、枠の部分こそ重要であると、世界中で学びの転換が起こった。
☆従来は枠の部分が抜けていたから、教える=覚えるであった。→はないのである。ところが、ベルリンの壁崩壊は、人間関係、コミュニケーションが大きく変わったことの象徴で、枠の部分のプロセスの重要性が拓かれた。
☆日本も総合学習というチャンスが生まれたが、ガラパゴス的な発想が支配していたので、結局理解が出来ずに、世界から遅れをとってしまったが、≪私学の系譜≫は、もともとディスカッションの理念を大切にしていたから、開成などで伝統的に継承され、その理念が生田先生によって見える化されたのではあるまいか。
☆生田先生の4つの段階は、ハーバーマスのコミュニケーションの系統発生を、授業という個体発生に圧縮したものだと考えることもできる。このあたりの研究には期待することとして、本テーマに関しては終わりにしたい。これ以上は私では力量不足であるがゆえに・・・。
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