2011首都圏中学入試動向[02]
2011首都圏中学入試動向[01]のつづき。
☆まずは、今年10月にあった四谷大塚(以降Yと表記)と日能研(以降Nと表記)の模擬試験の志望者数の昨年対比をみていただきたい。受験市場において難関10校と呼ばれている学校に聖光と栄光をプラスした。
☆この激減ぶりは、受験市場のメンバーが見れば、SAPIXの生徒がYの模擬試験から離脱したからというのはすぐにわかるが、一般には驚きであろう。
☆しかし、それよりもなによりも、もしもYだけNだけの偏差値しか参考にしていない受験生がいたとしたら、それこそが問題なのである。
☆偏差値はその母集団の質にかかわらわらず算出される。だから、SAPIX5000人が受けなくなったYの模擬試験とかつてのYの模擬試験は、明かに質が違う母集団であるにもかかわらず、偏差値は算出される。
☆昨年までは、上記の学校の受験生は、YまたはNを受けていただろうから、偏差値を目安に、受験戦略がたてられた。しかし、今年は、たとえば、開成や麻布に合格するはずのそれぞれ200名がYN(特にY)の模擬試験に参加していないのである。
☆ということは、YNの模試で偏差値が70あっても、合格率80%というのは怪しくなってくる。実際には100議席をYNの志望者で競うことになるのに、模擬試験ではあくまで定員の300議席を競う計算でシミレーションされているはずだからだ。
☆Yの模擬試験を活用している塾やNにおいて、今年は模擬試験の偏差値がブレるから信用しないでという指導はできないだろう。偏差値に頼らずに、油断せずにどこまでも自分の力を磨きあげるのだよという指導にならざるを得ない。もちろん、今までもそうしてきたが、今年はいくらなんでも事情が違いすぎる。
☆しかし、このような高偏差値を持っている受験生は、併願によっては、想定内のところに受かるだろうから、まだよい。
☆そうでない受験生は、どちらかというと励まされながらがんばってきているから、本来合格して抜けて行くはずのライバルが、そのまま歩留まって、受からないとなると、期待値が大きかったために、打ちひしがれるその心の動揺は読み切れないほどだ。
☆そのメンバーが、昨年までだと、併願をきちんと考えてきたはずなのに、今年は強気で、合格しなかったら公立に行くと意思決定しまうおそれがある。
☆すると、受験人口はそれほど減少していないにもかかわらず、入学者数は激減するおそれが予想される。
☆すでに武蔵と雙葉はあまくみられている可能性が高いのが、上記の表でわかる。神奈川エリアでは栄光があまくみられている。チャレンジすることは大いに結構であるが、細部にわたる知的トレーニングをおろそかにしてはならない。このぐらいまでトレーニングしておけばよいというレベルではないだろう。
☆高偏差値の実情とのGAPが、偏差値ではなく学校の質で選択して対策を立てている層の進路を断つ混乱をもたらす可能性がある。模擬試験という受験市場の指標の乱れの影響から逃れるためには、学校の過去問の研究という私学市場それ自体の指標に準拠する流れになるだろうが、私学市場においてその対応の拠点は今のところ、各学校をおいてほかにない。混迷は抑えきれないかもしれない。
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