グッドスクールの例③ 共立女子
☆今年共立女子は完全6年一貫化してから5年目を迎える。高校入試を停止したり、1学年の募集を320名に減らしたり、言うまでもなくシラバスを大胆に再編したり、中高がいっしょに学べる校舎をリニューアルしたり、今年からはOG大学生のチューター制を整備したりと、毎年組織を再編してきた。しかし、それは湖のさざなみのごとしで、深い湖水の底には不動の文化資本が蓄積されている。
☆まずは在校生の家庭の文化資本の高さには驚く。59点もの美術品が収蔵され、ギャラリーさながらの校舎にディスプレイされている。多くは卒業生の親からの贈られたものだが、美術品としての価値が高いものばかりである。
☆共立女子の美術品の中にきらりと光る草間彌生さんの絵も卒業生の保護者による贈り物であるが、不易流行を象徴するコンテンポラリーアートであり、共立女子のミームを表現しているかのようだ。
☆学校自体の文化資本の高さも圧巻である。しかも量もあまりに多く。同校のサイトや学校案内では紹介されていないことが山ほどある。まずは、編集出版冊子の多さ。それぞれに生徒が編集にかかわるから、その創造的才能の開花の機会もほんとうにたくさんある。
☆「ぱれっと」は、中学の美術で、生徒が創作した作品のポートフォリオ。精神の成長と表現の成長の過程が映し出されている。「ともだち」は中学の作文集。「共立」を「ともだち」と掛けているこの冊子は、授業でテキストとしても活用され、知の共有が図られていることがわかる冊子。
☆「沈丁花」は、中高のPTA広報誌であるが、巻頭は毎号生徒の「詩」で飾られる。「こだち」は中学生により編集され、「さわらび」は高校生によって編集される冊子で、1年間の学校生活の活動がまとめられている。すべての部活の様子もまとめられているから、ダンスや体操、バトンなどの部活以外にも剣道や太極拳などの武道が盛んなこともわかる。
☆また、吹奏楽だけではなく、弦楽オーケストラの活動も盛んであることがわかる。先日も共立講堂で演奏が行われたと聞く。また神保町の地域活動の一環として、弦と合唱によるクリスマスコンサートもあったということだ。講堂では、モーツアルトのシンフォニー25番、40番、41番が演奏されたというから腕前はかなりのものらしい。
☆創造的能力選抜については、入試と実は学校内の自己評価と内部監査によるシステムがある。入試問題はそのすべてが選択肢問題であるが、論理的視点、推理の視点などを問いかけるようにデザインされている。選択式問題はデザインの仕方によって、記述式以上に創造的能力を見抜くパワーを持つ。これはテスト測定学の常識であるが、日本の教育ではこの学問がないので、一般には記述の方が創造的能力を測れると考えられている。
☆自己評価とは、学校教育を教職員が行うことである。どこでもやっているのではないかと思われるだろうが、これが意外にそうではない。また内部監査は、大学付属であるため、法人による評価システムが機能しているということを意味する。したがって、これはほとんどの私立中高では行われていない。
☆これによって、教職員が教育の質を常にチェックし改善する目を養う機会を与えられている。広い意味でというか厳しい意味でというか、このチェックに耐えられるかどうかという人事の選抜システムが機能しているのである。共立女子の教育の質が持続可能であるのはこういうシステムがあるからである。
☆大学進学実績であるが、完全6年一貫化してからの本格的実績は2012年を待たねばならないが、今年から既に飛躍する兆しが見えてきている。今の時期ですでに慶應大学は7名合格している。一般入試が始まれば、もっと増えるだろう。要するに昨年の最終合格実績に、現状ですでに追いつく勢いなのである。
☆しかし、同校は、実績に対する関心はそれほど高くはない。それは6年間の教育の過程の結果であるから、大事なのは過程そのものだからだ。OGには遠くは正岡子規の妹律がいる。NHKの番組「坂の上の雲」で、律が共立女子で学んでいるシーンが出てjくる。
☆それから、天野 安喜子さんは女性花火師で鍵屋15代目宗家。元柔道選手で国際柔道連盟審判員の資格も持つ。まさに共立女子の教育そのものがキャリアデザインのベースになったのではないだろうか。
| 固定リンク
「Good School」カテゴリの記事
- かえつ有明 日常の学園生活こそ教育の質(2012.10.01)
- 海城学園 どこへシフトするのか?(2012.09.27)
- かえつ有明 新しいノーブレス・オブリージュへ(2012.09.26)
- 土浦日本大学中等教育学校 世界に開かれた学校(2012.09.26)
- 八雲学園 さらなる挑戦(2012.09.25)
最近のコメント