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PISAの受けとめ方国民は成熟

☆2010年12月8日、7:40。新聞各紙、テレビのニュースなどは、OECD/PISAの話題で盛り上がっているのに、いまだ文科省のサイトでは詳細がアップされていない。

☆髙木文科省大臣のコメントは掲載されてはいるが、実際の問題で語るメディアに比べ、コメントだけではどうも・・・。

☆何もそんなにあわてる必要はないと言われるかもしれないが、要は国の情報公開のあり方が問題なのだ。一事が万事という。情報はいかなるものでも、リアルタイムという姿勢が重要である。

☆それはともかく、今回の読解リテラシーの順位回復よりも、髙木大臣のコメントにある「読解力は、必要な情報を見つけ出し取り出すことは得意だが、それらの関係性を理解して解釈したり、自らの知識や経験と結び付けたりすることがやや苦手であること」を、非常に重く取り扱っている見識者やメディアのコメントが多くなっている状況は今後に期待がもてる。

☆相変わらず、文科省は「やや苦手」などという官僚言説を使っているが、そこが「やや苦手」どころではないという認識を、問題を分析し、それに対応する新教科書で十分なのかまで言及するようになった。

☆もちろん、PISAのそっくり問題が、全国学力テストのB問題で、このB問題はPISA模擬試験だなどと似て非なる問題であることを見抜けない教育評論家もいるが、早晩情報の確認レベルではなく、論理的・批判的思考の力が不足していることの問題性について議論が本格化するだろう。

☆全国学力テストのB問題は、体裁は自分の意見を書く論述型だが、情報の確認レベルの論述なのだから。

☆しかし、OECDもやるなぁ。そう思ったのは、「在宅勤務」に対する問題(◆)を見たからだ。この問題は、意見の異なる考え方を対比しながら考える問題である以上に、社会背景の差がでてくる問題だ。

☆日本を除く先進諸国やBRICsは、産業構造がすでに変化し、第一次産業から第三次産業に収まりきれない、クリエイティブクラスのシェアが広がっている。このリアルな背景を目の当たりにしているかどうかで、考えやすさも変わってくる。

☆そういう議論のトリガーになる問題である。日本の教育では、問題意識にまで触れようとするプログラムは実行できない。もちろん教師によるのだが、公の場で、そこを議論することは難しい。しかし、問題意識なくしてどうやって自分の考えが生まれてくるのだろう。

☆問題意識がなくても論述できるが、それはステレオタイプになる。それはステレオタイプな考え方の反復がメディアを駆け巡ることにもつながりかねない。今回のPISAの受け入れ方がそこまで議論されるようになるかどうか。ガバメントソリューションではなく、シチズンシップソリューションが活況を帯びるかどうか期待したい。

☆それにしても、「これらの課題に対応するため、文部科学省としては、来年度以降全面実施される新学習指導要領により思考力・判断力・表現力の育成に努めるとともに、35人以下学級実現のため、教職員定数を改善するなど教育条件を整備し、「個に応じた指導」の推進にしっかりと取り組んでまいりたいと考えています」という髙木大臣のコメントは、PISAの報告に対し無防備だ。民主党はこういうところがアマイということだろう。それとも文部官僚の嫌がらせか。

☆というのも、今回のPISAでは次のような結果がでているからだ。。。

好成績を収めた学校制度は、学級規模を小さくすることよりも、教員給与を高くする方を優先する傾向がある。

◆在宅勤務に関する問題(毎日新聞から)

 在宅勤務

 「未来のやりかた」

 想像してみてください。コンピューターや電話などの情報ハイウエーを使って、あなたの仕事をすべて片付けられる「在宅勤務(テレコミューティング)※」という働き方があったらどんなに素晴らしいことか。もう、ぎゅうぎゅう詰めのバスや電車でもみくちゃにされながら、何時間もかけて通勤する必要はありません。あなたの好きな場所で仕事ができます。そしていつでも都合のよいときに仕事ができるようになるでしょう。新しい仕事のチャンスがどれだけできるか! モリー

 「待ち受ける災難」

 通勤時間を短くして、それに費やされるエネルギーを節約するというのは、たしかによいことです。ですが、それは、公共交通機関をもっと便利にしたり、職場の近くに住むことができるようにしたりしてなしとげられるべきことです。だれもが在宅勤務する生活というのは野心的な考えではありますが、そうなったら、人々はますます自分のことだけしか考えなくなるでしょう。自分が社会の一員であるという感覚がますます失われてしまっても、本当にいいのでしょうか? リチャード

 ※「在宅勤務(テレコミューティング)」とは、1970年代初めにジャック・ニルズがつくった言葉で、会社から離れた場所(たとえば家など)でコンピューターを使って仕事をし、電話回線を通じてデータや文書を会社に送るという勤務形態を表した言葉です。

 上の「在宅勤務」をよく読んで、以下の問に答えてください。

 問1

 「未来のやりかた」と「待ち受ける災難」という二つの文章はどのような関係ですか。

A 違った根拠を用いて、同じ結論に至っている

B 同じ文体で書かれているが、まったく違った話題について論じている

C 同じ考えを述べているが、違った結論に至っている

D 同じ話題について、対立した考えを述べている

 問2

 在宅勤務するのが難しい種類の仕事を、一つあげてください。また、そのように考えた理由も説明してください。

 問3

 モリーとリチャードの両者が同じ考えなのは、次のうち、どの点についてですか。

A 人々が働きたいだけの時間、働けるようにすべきである

B 人々にとって、通勤に時間がかかりすぎるのはよくない

C 在宅勤務は、だれにも向いているわけではない

D 人間関係をつくることは仕事のもっとも重要な部分である

 <読解力の解答>

問1 D

正答率  OECD平均52.3%、日本69.5%

無解答率 OECD平均3.5%、日本2.4%

問2 仕事の種類を一つあげ、その種類の仕事をする人が在宅勤務できない理由を適切に説明している。例えば「建設業。別の場所から木材やれんがをあつかうのは難しい」など。

正答率  OECD平均56.2%、日本66.5%

無解答率 OECD平均15.0%、日本23.6%

問3 B

正答率  OECD平均60.1%、日本73.9%

無解答率 OECD平均3.6%、日本1.8%

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