立教女学院の礼拝の力
☆毎朝20分間、立教女学院では礼拝を行っている。聖書の言葉とオルガンと合唱というのは、すぐに想像ができるだろうが、礼拝で校長・理事長、院長、チャプレン、宗教科の先生方がどのようなお話をしているかまでは、具体的にイメージするのは難しいのではないだろうか。神様のお話がされているのは確かであるが、ただ聖書解釈をしているわけではない。
☆それではどういうお話がされているのか?今回それが公開された。「聖マーガレット礼拝堂から」という冊子(クリスマスカードと共に頂いた)が完成し、扉を開くや思春期の時期に語られる人間の存在とその本質があふれ出た。
☆たとえば、6月という時期に、中学校礼拝では、マルコの福音15章から次のような人間のルサンチマンという心の壁のすさまじさを表現している箇所が読まれている。群衆のみならず、ピラトも祭司長たちも「心の壁」を持っている。イエスは、「それは、あなたが言っていることです」とさとすだけである。その心の壁がどんなことを引き起こすことになるかは、その時点ではまだ人間は理解していない。。。
夜が明けるとすぐ、祭司長たちは、長老や律法学者たちと共に、つまり最高法院全体で相談した後、イエスを縛って引いて行き、ピラトに渡した。ピラトがイエスに、「お前がユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエスは、「それは、あなたが言っていることです」と答えられた。・・・・・・・ ピラトが再び尋問した。「何も答えないのか。彼らがあのようにお前を訴えているのに。」しかし、イエスがもはや何もお答えにならなかったので、ピラトは不思議に思った。・・・・・・群衆が押しかけて来て、いつものようにしてほしいと要求し始めた。そこで、ピラトは、「あのユダヤ人の王を釈放してほしいのか」と言った。祭司長たちがイエスを引き渡したのは、ねたみのためだと分かっていたからである。祭司長たちは、バラバの方を釈放してもらうように群衆を扇動した。・・・・・・ピラトは言った。「いったいどんな悪事を働いたというのか。」群衆はますます激しく、「十字架につけろ」と叫び立てた。ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバを釈放した。そして、イエスを鞭打ってから、十字架につけるために引き渡した。兵士たちは、官邸、すなわち総督官邸の中に、イエスを引いて行き、部隊の全員を呼び集めた。そして、イエスに紫の服を着せ、茨の冠を編んでかぶらせ、「ユダヤ人の王、万歳」と言って敬礼し始めた。また何度も、葦の棒で頭をたたき、唾を吐きかけ、ひざまずいて拝んだりした。このようにイエスを侮辱したあげく、紫の服を脱がせて元の服を着せた。そして、十字架につけるために外へ引き出した。
☆そして、このシーンについて校長・理事長が語るわけであるが、それはこの光景の解釈ではまったくない。聖書の言葉の理解には目に見えないロゴスを汲み取る行為が重要なのだろう。校長・理事長自らがその行為を中学生に拓いて見せるのである。
☆「心の壁をとりのぞこう」というテーマに、聖書のシーン以外に、ベルリンの壁崩壊の問題を結びつけたり、地球温暖化の問題を結びつけたり、社会に存在する差別や偏見を結びつけたり、メタファーを読み解く論理が展開される。
☆毎日このようなメタファーと論理をつなげる(いわばハイパーテキスト型の)礼拝が行われているのである。世界の痛みを感じる心とそれを解決しようとする問題意識とそのための思考や表現がトレーニングされているのである。
☆国連に飾られているあるモザイク画には、「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさ」という「黄金律」が刻まれているが、このゴールデンルールは、ルカの福音書に出てくる。このことについて宗教科の教師が語っているが、これもささまじい力のある言葉である。
☆判断の基準の転換を呼びかけているのであるから。この基準を心の座標軸として位置づけることこそ本物のグローバルリーダーになることである。
☆いずれにしてもこのようなロゴス(お話)を、毎日聴くわけだから、生徒は心の中でなんらかの化学反応を起こさざるを得ないだろう。
☆それが立教女学院で行われている教育の中で広がっていくのである。この心の座標軸があるからこそ、教科学習はたんなる知識の習得で終わらないし、進学指導は単なる受験勉強にならない。
☆この座標軸があるからこそ、自らテーマを求め(Ask)、調べ(Research)、言語化して発表する(Express)というARE学習やこの学習を通して編集する高校生の卒業論文の行為が魂のこもった学びになる。
☆キリスト教学校の礼拝やミサは、一般にイメージされているたんなる形式的な宗教行事ではない。ドメスティックに制度化された心の壁をのりこえ、人間の存在そのものを考え行動する座標軸を形成する場である。この座標軸が形成されるからこそ世界で通用する人材が育つのである。
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