首都圏中学入試2011始まる⑧
首都圏中学入試2011始まる⑦のつづき。
☆1月15日(土)は、2月1日に東京、神奈川が中学入試に突入するため、首都圏では私立中高一貫校の直前説明会などの生徒獲得のイベントが70箇所以上で行われた。神奈川エリアの栄光学園は、出願締切日。昨対比99.6%と、横ばいだが、栄光でさえ100%を超えられないわけだから、やはり応募者動向は、私学にとって厳しい風が吹いている。各校がギリギリまで直前説明会などの生徒獲得イベントを仕掛けるのは、こうした危機感の表れであることは否めない。
☆しかし、ただイベントの量を増やせばよいかというと、そうでないことはすでにどの学校もわかっている。ただ、どうすべきかはまだまだ明確な戦術目標がでてきていない。
☆15日はセンター入試の初日でもあったが、読売新聞によると、慶應大学は来年からセンター試験の利用から撤退することを表明。理由は、
慶大の担当者は、「優秀な学生の獲得を目指し、独自の特色ある入試を導入する」と説明する。(読売新聞2011年1月16日)
☆ということのようだ。
☆これは、センター試験が易しい問題であるということよりも、創造的才能を選抜できる機能があまりに脆弱だということが本当のところだろう。
☆APUのアドミッションスタッフとときどき情報交換するが、多言語能力があり、ディスカッション能力が高く、チームビルディングができるリーダーシップの強い人材は、この就活難にあっても、引く手あまただという。APUの就職率の高さは、各紙でもよく取り上げられる理由もそこにある。
☆センター入試の選抜機能は、そのようなコミュニケーション能力の高い人材を見抜くことはできないし、何よりそういう人材がセンター入試に向けていくら勉強しても育たない無駄な時間を費やす、コストパフフォーマスが悪すぎるシステムなのである。
☆そのことにさすがは慶應大学と言うべきか、2006年に医学部が撤退したときから、ずっと気づいていたのである。
☆このことは中学入試にもあてはまる。三大模試の模擬テストのような形式の入試問題を作問するような学校は、いわゆる偏差値通りの生徒を受け入れることになる。才能発掘することができない。
☆麻布や開成、武蔵、栄光などの入試問題を見ればわかるように、このような私立学校は、模擬試験のような入試問題を出題しない。多くの塾が模擬試験型の授業を構成しているから、結果的に高偏差値の生徒が入っているが、彼らは過去問に取り組むことによって、論理的思考力やショートエッセイの能力を身につける。
☆だから、これらの力を身につけている場合、模擬試験の偏差値がそれほど高くなくても合格する場合があるが、それは奇跡が起こったわけでもなんでもない。学校が望んでいる能力が優先的に身についているだけで、偏差値をあげるための能力を身につけていないだけなのである。
☆もっとも、たいがいの場合、両方の能力を身につけてしまうものだが・・・。それは、とにもかくにも、「独自の特色ある問題」を学校が作るからそうなるのである。
☆したがって、今年も、模擬試験を超える入試問題を作成しようという意欲を燃やしている私立学校が徐々に増えてきている。海城学園の帰国生入試、かえつ有明の作文入試、佼成学園女子のPISA型入試など、選抜機能の質をアップしようという学校の入試の結果は見逃せない。
☆写真は、15日かえつ有明の説明会で行われた作文入試の体験授業の風景。チョコレートの歴史を通して、労働→市民→消費者という流れにそった社会生活の変化について考える授業。砂糖やお茶を通して、近代国家の成立を考える問題ではなく、チョコレートを素材にしたのは、大量消費時代とその変化という生徒自身にとって身近な生活を考えるヒントにできるからだそうだ。
☆もちろん、チョコレートの歴史は、キットカットの歴史も含むから、授業終了時、「キット勝つ」を合言葉に、受験生にエールを贈る心憎い演出もねらってのことである。
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