2012年新教育振興基本計画スタート 一年前倒し
☆産経新聞 (2010年1月3日)によると、
5年ごとに教育政策の基本目標を定めている国の「教育振興基本計画」について、文部科学省が1年前倒しで改定し、平成24年度から新計画をスタートさせることを検討していることが2日、分かった。経済的な理由で高校や大学進学をあきらめる子供をなくす行政支援拡充や、小中学校の少人数学級推進などを国の計画として盛り込み、早期に実行するのが目的だ。
☆政権交代による教育政策の変更に対応するというのが目的だろう。また、
国会が衆参でねじれ状態になっており、法律の改正などが困難な情勢になっていることから、文科省では国会の議決を必要としない教育振興基本計画改定を政策推進の柱としたい考え。
☆しかし、実際に何を変えなければならないのか。改定程度でよいのだろうか。たとえば、現行の基本計画でも、「地域全体で子どもをはぐくむことができるよう,その教育力を高めるとともに,地域が学校を支える仕組みを構築する。このことを通じ,地域の絆や信頼関係を強化し,より強固で安定した社会基盤づくりにも資する。」というプランが盛り込まれているが、どのくらい実行されているのだろうか。
☆河北新報(2010年 1月3日)にはこんな記事も載っている。
さまざまな事情によって勉強したくてもできなかった高齢者や、不登校の子どもらを対象にした無料の「自主夜間中学」がことし4月、福島市に開設される。年齢や経歴など何も問わず、ただ勉強する気持ちさえあればいいという学校。設立を目指す住民グループは「市民の立場から、市民のための学びの場をつくりたい」と間もなく本格的な準備に取り掛かる。 公立の夜間中学は東京都や大阪府にあるが、東北にはまだない。準備を進めている「福島に公立夜間中学を作る会」によると、このほかに全国で約20の自主的な夜間中学が運営されているものの、東北では聞いたことがないという。
☆頭が下がる新しい公共圏による教育の場づくりであるが、要するにまだまだ進んでいないということだろう。この活動の新しさは、政府や自治体による財政出動が仮になくても可能だという点にある。
☆少子高齢化の影の部分ばかりが強調されるが、定年によって退職したのち、未来の市民を育てる活動に従事することができる。これはボランティアということではない。ハンナ・アレントのいう人間の条件の最終目標を満たすことである。
☆労働と仕事と活動のうち、労働と仕事はしなくなっても活動はできるのである。教育振興基本計画を読んでも、民主主義とは何かわからないし、人間の条件とは何かもわからない。言葉だけが列挙されている。だから、就職活動というと高賃金と安定した労働条件のあるところが就職だという意識が広まっているのだ。
☆一年前倒しになることはたいへんよいことであるが、教育とは労働力のみを生産することではないのである。文化とは労働によってのみ作られるのではないのである。時間で測れないボランティア以上にボランティアの活動も労働概念に含めるか広げるかしないと国力はどんどん弱くなっていく。
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