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グッドスクールの例⑩ かえつ有明

「グッドスクールの例⑨ 麻布」のつづき。

☆かえつ有明は、そのキャンパスが、臨海副都心という最先端の都市づくりの一環として存在しているところからもわかるように、とにかくそのビジョンは新しい。未来性を感じる教育内容、教育施設、教育活動が充実している。

☆あまりに先進的だと、選択する側は勇気がいるものだ。特に内向き日本と言われる昨今は、大学進学実績さえ充実していればそれでよいという風潮になりがち。しかし、教養という文化資本が豊かな場合、自分を超えて公共的な立場に立って、物事を判断できる。

☆この閉塞状況日本の中でサバイバルするだけではなく、家庭や社会、国家、世界を幸せにするために自分はどんな役割を果たしていくのか、それが大事なのだということを確信している家庭が、同校を選択するはずだ。

☆かえつ有明は、キャリアデザインなど多くの行事で、保護者がサポートするが、そのようなアクションができるのは、家庭の文化資本が豊かな証拠である。

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☆さて、この未来性や先見性は、どこから由来しているのだろうか。それは創設者嘉悦孝の思想と精神にある。嘉悦孝は、まさに明治という国家が作られる時代にあって、アダム・スミスを原書で読んだりして、英語を学び経済を学び続けた。女性も経済的自立を果たし、国際的な教養を身につけて、国づくりに参加しようという強い意志があった。

☆その意志は、父から学ぶのであるが、その父は横井小楠に学んだのである。横井小楠は、坂本竜馬に思想的に大きな影響を与えた人物である。小楠の今でいう富国裕徳論は、明治国家の富国強兵以上の世界的視野に立っていたかもしれないと言われているほど。嘉悦孝もそのことについて触れている。坂本竜馬が小楠を尊敬したというのもわかるような気がする。

☆ともあれ、明治維新以降の日本という国づくりの発想は、当時多様であり、そのうちの1つが今日形になったにすぎず、まだまだ他の発想、つまり横井小楠や坂本竜馬の系譜である嘉悦孝の精神が存在している。古くて新しい発想をもって、チャレンジすることはこれからも可能なのである。幕末から明治にかけて、とにかく斬新なアイデアがいっぱい生まれた。そのリソースがかえつ有明には継承されている。その文化資本ははかりしれない。

☆そのリソースが新しいかえつ有明の教育活動に流れ込んでいるのである。エコキャンパスの発想それ自体、すぐに江戸時代の精神が流れていることは直感できる。サッカーやマーチングバンドなどの部活の背景には、英米流儀が浸透している。かえつ有明は、ケンブリッジ大学のリソースも使えるほど。学校説明会で説明される内容のバックボーンには嘉悦孝の精神が宿っているものばかりだが、ここでは、ふだんあまり説明されていないシーンを同校のサイトから引用してみよう。

☆1月7日(土)、第3学期の始業式後、中学1・2年生が「ニューイヤーウォーク」を行ったという。東京タワーからレインボーブリッジを経由し有明の学校までの約10kmをひたすら歩くという初めて行った行事だそうだ。

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☆東京タワーから出発するというのが、素敵なアイデアではないか。東京タワーは、スプートニクショックを受けてアメリカが科学に力を入れる時代に作られている。日本だけではなく世界の新しいテクノロジーの幕開けの象徴でもある。そして建築工学的にも興味深い。

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☆しかし、何より近くには三田があり、レインボーブリッジを経由して、つまりお台場エリアを散策するというのは、まさに嘉悦孝の生きた時空をなぞることでもあろう。私学の発祥の地であり、当時は外国人の居住地エリアでもある。目に見えないリベラルアーツ・パワースポットというわけである。

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☆それにしても、生徒たちがかえつ有明にたどりついたときに、そこに温かい食事を用意している保護者がいるというつながりはグッとくる。

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☆英米流儀の教育の伝統に、科学の最前線を子どもや市民と共有するという科学コミュニケーションがある。教養というとエリート層だけのものと思われがちだが、市民や民主主義を創出した国なのだから、むしろ知の平等化は当然の発想。

☆嘉悦孝が学んだアダム・スミスの発想でもある。マーケットで消費活動する市民の道徳感情の基準とは何か?その基準は神や国家が押し付けるものでも、利己的な判断でもない。科学しなければならないのである。

☆そういう意味で、判断基準を養い、クリティカルシンキングを養うというかえつ有明の不易流行の教科に「サイエンス科」という新機軸があるが、「サイエンス科」の考え方を共有するために、つまり不易流行としての嘉悦孝の精神を継承し続けるために、「サイエンス科」の研修は教職員と生徒が協力して行っている。

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☆創造的能力選抜システムに関しても充実している。まず、入試問題を始め、入試関連情報を、同校サイトで、きめ細かく公開している。

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☆きめ細かい語りかけは、かえつ有明の授業の特長であるが、この配慮こそ、生徒1人ひとりが自分の才能にハタと気づくチャンスなのである。講義形式の授業が中心である日本の教育ではまだまだ見直されていないが、ヴィゴツキの「最近接領域」という学習理論が背景にあるのではなないか。

☆今春の入試で新設される「作文入試」も、問いのプロセスに従って考えていくと、最後の200字記述にも取り組める仕掛けになっているが、まさに「最近接領域」の学習理論の発想が流れている。簡単に言うと、コミュニケーションがアイデアを生み出すということだろう。

☆だから、授業以外にもチューターによるフォロー体制がしっかりしているのである。

☆さて、新しい公共人は輩出されるかについては、もはや説明する必要はないだろう。新しい公共人のイメージは、坂本竜馬であり、吉田松陰であり、高杉晋作であり、福沢諭吉であり、横井小楠であり、・・・・・・嘉悦孝なのである。

☆もちろん、大学進学体制も万全である。2012年、かえつ有明として出発して6年間学んできた一期生の実績が出る。楽しみである。

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☆そして、2012年は6年間のPDCAサイクルが一巡するわけであるから、再び改善や改革がなされるだろう。

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